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イロイロ ぬくもりの記憶のrage30のネタバレレビュー・内容・結末

イロイロ ぬくもりの記憶(2013年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

フィリピン人メイドを雇う、シンガポール人一家の話。

息子の世話に手を焼くがあまり、主人公一家はメイドを雇う事になるわけだけど、この息子の態度がま~悪い。
反抗期というレベルを超えたクソガキぶりで、見ているこっちもイライラさせられる。
ただ、映画を見ていると、両親…特に母親が子供に関心がなかったり、体罰で従わせたりで、なかなかのクソ親である事も分かってくる。
息子の反抗的な態度は、そこに起因しているのだろう。

そんな母親に対し、メイドは秘密を守ってくれたり、体を洗ってくれたりで、信頼関係を築いていくと。
実の母親以上に親密になっていく2人に対し、嫉妬心を覚える母親も興味深い。
後に彼女が自己啓発セミナーにハマってしまう事を考えると、リストラに怯え、仕事に埋没する彼女にも、何かしらのケアが必要だったのではないだろうか。

所謂、機能不全家族を描いた作品ではあるが、問題の原因を個々に求めるのではなく、その外側にある背景も本作は描いていく。
息子の問題は両親の影響もあるのだろうし、両親の問題は仕事や社会の影響でもあるのだろう。
結局のところ、社会に蔓延する不安や歪み…その皺寄せは何時の時代も、子供や外国人労働者といった弱者が被るのである。

ラスト、息子はメイドと別れる事になるが、その痛みは彼を成長させてくれるに違いない。
親の影響を子供が受けるのならば、メイドが良き母親として与えた影響もまた彼の中には残るはず。
そして、今度は彼が妹に対して、良き兄として影響を与えてくれる事を願ってやまない。



余談
それにしても、シンガポール人のメイドへの差別的な振る舞いには驚かされた。
シンガポールではメイドを雇うのが普通とはいえ、あれでは子供に悪影響があろうだろうし、実際、子供が差別的な発言をする場面もある。
本作は1997年を舞台にしているが、流石に現在は価値観がアップデートされているのだろうか…。
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