半兵衛

箱の中の女 処女いけにえの半兵衛のレビュー・感想・評価

箱の中の女 処女いけにえ(1985年製作の映画)
2.0
当時流行していた暴行ものポルノに負けじと日活が新たに打ち出した「ロマンX」シリーズの一本、でもロマンポルノにそんな生々しい暴力をお客は求めていなかったしそういう性癖の人間はその手のビデオを見るので結局は主流として成立せずに終わってしまう。本作もビデオによる映像やゲリラ撮影(マジックミラーまがいの場面も)、痛々しいエロシーンの数々がエクストリームな刺激となってもたらされるものの、それをロマンポルノ特有の様式やドラマと上手く噛み合わず単なる痛々しい映画に。序盤での『アンダルシアの犬』のような目にナイフという場面の、ブニュエルのような刺激とならず嫌悪感しかもたらされない映像がそれを象徴している。酒を飲んだ状態で鑑賞してもそんな印象なのだから素面だったらもっと気分が悪くなっているのだろう。

脚本を担当するのが若松プロ出身のガイラ=小水一男だけに、監禁して調教した女性を敢えて解放することで世間のモラルを崩壊させようとする変態カップルの姿はさながら若松孝二監督の『胎児が密猟するとき』の山谷初男を彷彿とさせる。ただカップルを演じる俳優の演技が平凡なため、山谷初男や石井輝男作品の小池朝雄のような「名優による吹っ切れた変人演技を心行くまで楽しむ」という異常な映画ならではの快楽が皆無なのでテンションが落ちてしまいドラマが上手く起動していないのも残念。ロマンポルノの職人監督・小沼勝の仕事振りも堅実に変態映画を作ってはいるが、それを斬新な映像に仕立てるまでには至っておらず。所々に登場する夕陽や雨のショットは小沼美学を感じるけれど。

それでも監禁され異様な調教を施されるヒロインを演じる木築沙絵子の、下水道で汚水まみれになったりハードコアなエロシーンをこなしたりと体当たりな演技の数々には目を見張るものがありこれだけでも見てはいけないものを見る映画としての刺激がありそこそこの満足感が。でもそんな彼女の姿はヒットする作品にもがく撮影現場の姿が重なって痛々しさが先行してしまうのも事実。

変態カップルの思惑が崩壊するラストは少し痛快。
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