垂直落下式サミング

箱の中の女 処女いけにえの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

箱の中の女 処女いけにえ(1985年製作の映画)
5.0
鏡張りの車のなかで、新宿の雑踏を聴きながらセックスに興じる夫婦。ある日、彼らは若い女を性奴隷とすることを思いつき、実行に移すのだが…。
いたいけな女学生を拉致監禁する性倒錯エロカップルの愛車は、鏡張りのハイエース。マジックミラー号プロトタイプが登場!
箱の中の女というタイトルの通り、箱に入れて女を拘束するシーンが多い。声を封じて視角と聴覚を奪うだけなら、猿ぐつわに目隠しと耳栓でいいはずなのに、顔に木箱を被せて覆ってしまうのは、画的な嗜虐美学ポイント高め。
カップルの根城に連行された哀れな女学生。手足を縛られて拘束され、衣服を破られ半裸に剥かれて、ハサミの先端で目をえぐられそうになって恐怖で失禁してしまう。それだけてもヒドイってのに、さらには、放水!レイプ!馬乗り往復ビンタのキャットファイト!開幕からインモラルのつるべおち。度を越した精神的な陵辱っぷりがすさまじい!
ハードコアやセックス以外も壮絶なシーンが多く、ほとんど全編クライマックスと言っていい。全裸で後ろ手に縛られたまま下水道のなかを逃げて、壁にうつる追手の影に怯えながら汚水にまみれて逃げ惑うシーンは、スリラー演出としてかなり良質。
行為がほぼ全編モザイク塗りつぶしなのは仕方ないが、これら体当たりっぷりというか、演出に逃げていない生身のワンカットに、得たいの知れない生命力を感じる。
中盤で、事件発覚後の警察署の取り調べ室までジャンプカットして、時系列が前後しはじめるのがショッキング。そこで話されている内容がグロテスクであるし、局部がモザイクで見えないからって、この内容を映像化することに躊躇いがなくて、たいへんえげつない。
時系列が行ったり来たりしはじめて、前から後ろから事件の顛末に向けて交差する。これがいい効果を生んでいる。先に結末をみせることで、「コイツらちゃんと捕まったんだ」と観客を安心させると同時に、「被虐者の証言として語られる陵辱の日々は事実である」というエッグい逆説が成り立つから、救いようがなく倒錯した世界観の構築に効果をあげている。
随所に、昭和後期の風俗が写し取られているのも見どころ。セーラー服を脱がさないでって、こんなキショイ歌詞だったんだ…。知ってたけど…。エロ映画にお似合いですね。当時のゴム製品の色のバリエーションの少なさからなのか、ペニバンとか電動ディルドは濃い赤茶色みたいなカラーリング。昭和ジョークグッズ色合いエグい。