出会いは黄色、深まりは赤、別れは黒。それは愛しい人が着ていたパーカーの色。14階の眺めの良い部屋からぽつんと見送った色。たった二日で心の中に専用の部屋を作り去っていった人。でもその空白の部屋は私を少し強くしてくれた。
とにかく全編センスが良過ぎる。こんな映画を撮りたい監督(及び監督志望)が世界中に三千人は居そう。そもそも目指してない私も何故かちょっと嫉妬している。あまりにもリアルで生々しい会話と仕草、その場の温度も匂いも手触りさえ伝わりそうな映像、二人をこっそり覗き見しているようなカメラワーク、無駄がないのに奥深く入り込む丹念な脚本。ナチュラルにも程があるのに途方もない完成度。繊細かつ克明。しかもそれをさらっと提示するさりげなさまで憎い。ベッドのカミングアウトのシーン素晴らし過ぎた。あんな一生分の優しさをもらったら忘れられなくなっちゃうよ。
モーニングコーヒー／おばあちゃんのマグカップ／夕暮れの二人乗り／新しい靴／夜の遊園地／人前でキスをすること／封筒のボイスレコーダー
