いけ

WEEKEND ウィークエンドのいけのレビュー・感想・評価

WEEKEND ウィークエンド(2011年製作の映画)
4.5
たった2日、幻みたいな人に出会い恋をして、そして去っていく。
すごく小さな話ではあるけど、最後グレンがラッセルにとある物を渡して去っていくように、何か胸に残るものがあった。

異性愛規範の世の中、周囲へのカミングアウト、同性婚に対する考え、他国に比べて自国の政治や社会が後進的であること、疎外感や孤独など、2人が腹を割って議論するシーンが見応えがあった。

グレンがラッセルの父親に成り切ってカミングアウトのロールプレイをするシーンが一番好き。
グレンはきっと自分が1番言われたかった言葉をラッセルの父親に成り切って言ったんだろうな。

グレンが帰る様子をラッセルが自室の窓から眺めるシーンが印象的に繰り返されるが、議論のあと仲直りのキスをする姿は窓の外から撮られている。
ラッセルが「家にいる時は自分のセクシャリティーは気にならないが、外に出ると消化不良の気分になる」と言っていたけど、オープンに生きるグレンをラッセルは安全地帯の部屋から眺めてる構図がとても物語的だなと思った。

そんなラッセルも少しずつ勇気を出してオープンにして行こうとする。
感情をオープンにすることで味方になってくれる友達がいて良かった。
最後の別れ際のキスシーン、最初はフェンス越しに周囲と隔てられた2人が映し出されるが、カメラが寄ることでだんだんフェンスのピントがぼやけ、次第に2人と周囲を隔てるものが無くなっていく。
ゲイであることを隠して生きているラッセルが、外で男性とキスをすることで、周囲からは冷たい言葉が飛んでくるのが悲しかったけど、ラッセルの勇気を称えたい。

そして、殻に閉じこもっていたラッセルがオープンになっていく姿を見てアングルや演習で表現しているのもとても良い良かった。

また、決してカミングアウトを強要するような物語になっていないのも好感が持てた。
カミングアウトするかどうかは当人が決めることであって誰かに強要されるものではない。
だけど、カミングアウトしたいと思ってる人が安心してカミングアウトできる社会であって欲しいと思うし、この映画はそういうスタンスだと感じた。

2日間のとても小さな話だけど、人生ってこういう小さな出来事の集まりで構成されていると思う。
そういう小さな出来事を大切にする映画が僕は好きです。
いけ

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