流浪のガンマンが辿る数奇な運命を描く。
なんといっても個性の強いキャラクターや宗教的メタファーで築かれたその世界観が醍醐味。宿敵との哲学じみたやりとり、渡り合いを通してガンマンが悟りにも似た感覚を得ていく過程は実に示唆に富んでいる。
情け容赦のないカットの数々もまたプロットを印象付けており、中でも宿敵の亡骸を確認していく描写の物悲しさは圧巻。
物語冒頭とリンクしているラストには妙な納得感があり、「何かすごい物を見た」という感動と余韻も豊かで、なかなか味わえない経験となった。
ウェルメイドとは程遠い作りなのに、惹きつけて止まない何かを感じさせる傑作。人の持つ性質に強く言及した社会派でもある。