よしまる

ピエロがお前を嘲笑うのよしまるのネタバレレビュー・内容・結末

ピエロがお前を嘲笑う(2014年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

 自分語り、どんでん返しとくれば「カイザーソゼ」を思い出さずにはいられまい。

 けれどもあの映画がラストの種明かしにすべてを集約させていたのに対し、こちらは冒頭から取調べのシーンが始まる。これまでにも「ドミノ」や「スラムドッグミリオネア」など幾度となく使われたパターンで、これの欠点は尋問されてる主人公が劇中でどんなピンチに陥ろうとも死ぬことはないと約束されてしまうためスリル度が極端に低くなること。下手すると出落ち感が半端ない。

 who am I。自らを透明人間と言うほどに世間から黙殺されてきた若者が、ハッカーという才能を発揮して仲間を得て、ロマンスもあり、犯罪を繰り返す中で承認欲求を満たし成長していくという、まず今時にしては主人公設定に魅力が無さすぎw
 周りのオトモダチも型にハマったワルばかりで、ヒロインもイケてない。

 まあそれでも地下鉄を電脳世界に見立ててやりとりするシュールさや、ドイツらしいテクノやヒップホップはやっぱりカッコよくて、ちょいちょい出てくる取り調べ(=つまり現在進行形のシーン)が、これらをどう伏線として使うのか、どう回収していくのかと煽る構造。観るほどに期待は高まるばかりだ。

 エェ⁈ってなるほどお粗末な展開も多いんだけれど、そこは、待つw

 さてここからはネタバレ。
 
 CLAYのやってること自体が観ていて心躍るようなことでは無いうえに、劇中でも散々「小物」というワードが飛び交う。これに対する反発のボルテージが凄まじく、その一点においてのみ団結が生まれるのはまあ青春ピカレスクロマンとして楽しむとしよう。
 観客をミスリードして、さぞどんでん返しかのように伏線を張っていたのはお見事。見せ方もカッコよかった。もしカイザーソゼがいなかったら、ここまでで充分面白い映画だったろう。
 
 しかしながら、物語はここでは終わらず、実はそれさえも証人保護プログラム欲しさの策略だった、というもの。

 おい待て、てことは何もかも全部作り話の可能性があり、言わばなんでもアリってことやん??!
 実際問題、証人保護されると別人として生きていける反面、国の監視下に置かれて生活する羽目になるし、仲間と会うことすらままならないのでは?それとも普通に別人としてデンマーク行ってハッカーできんのかな。

 4個の角砂糖が1個になり、また4個になる。フフと笑みを浮かべ、すべてを悟ったような顔をする捜査官。
 まったく慌てることもなく、余裕ブッこいてるのは所詮CLAYなんて「小物」と思ってるからではないのだろうか。そんな彼女を尻目に船の上で颯爽と別人になりすましウインクするベンヤミンが、ボクには激しく「小物」に見えてしまった。

 結局のところ、ラストをどんでん返す!ってことに執着する余りに何でもありの伏線作りに時間をかけて、小物が証人保護を受けるための策略を延々と見せられていた、ボクの目にはそんなふうに映ってしまった。
 
 映画なんて楽しんだもん勝ち。その意味ではボクは敗者で小物だった。この映画に関しては。