ベルサイユ製麺

いつだってやめられる 7人の危ない教授たちのベルサイユ製麺のレビュー・感想・評価

3.5
いつだってやめられる!
どこからだって見始められる!

…み、観ました、1本目。なんかホントすいません…。


冒頭、夜。薬局の壁にもたれかかるピエトロ。
モノローグによると、「イタリアにおける違法薬物とはその分子構造で定義づけられる。つまり分子構造を少し変えれば違法も合法に変わる」と。
…目出し帽に武装した男たちがゾロゾロと店内に。数度の発砲音!
その4ヶ月前の事。
生物学・計算論的神経学・分子力学の三つの学位を持つ優秀な(だが弱気で要領の悪い)教授ピエトロは、しかしその研究の難解さ・ウケの悪さ故に評価されず、失職してしまう。薬物依存患者の為のソーシャルワーカーをしている彼女にも愛想尽かされ気味…。
ある晩、訳あって潜り込んだクラブで、ピエトロは合成麻薬の売買が如何にボロ儲け出来るかを知ってしまう。直ぐに合成麻薬について調べ始めるピエトロ。
”合成麻薬をつくるぞ!”
彼は、それぞれ失職しているが優秀なかつての教授仲間を集め出した!!合成麻薬を売買する“ギャング団”の誕生である!


…ナルホドー。事の発端は金欲しさの薬物製造だったんですな。…なんか全然擁護出来ないような気がするぞ。しかも長年連れ添った彼女さんは薬物依存の患者を助ける仕事をしているワケですよ。これはアウトだなー。ピエトロなんて悪いやつなんだ。予言してやる!…お前は将来収監されるのだ!!!
仲間集めの件はテンポ良いし説明もスマートで良いですね。初期のガイ・リッチー作品みたいです。で、ピカレスクロマン的に成り上がって行く展開(スーツとか高級品とか買ったり、札を機械で数えたりの成金モンタージュ)は、みんな好きなんじゃないですかね?
分子構造を変えて云々の件は、かつての脱法ドラッグブームを思い出しますねー。…警察がなかなか出て来ないなぁと思って見てたんですけど“脱法”なんですもんね。そりゃそうか。
じゃあ、どうやってこのお話が続編の冒頭の××されてるシーンに繋がるのかと言えば、先にドラッグ市場を牛耳っていた大物“ムレーナ”の登場ですよ。……あー!コイツ、アイツじゃん!!!!
ナルホドー!これは今シリーズ一番のスッキリポイントかもしれない!
…で、ピエトロたちアマチュアの烏合の衆ではモノホン(と言いたいとこですが、…完結編を観てください!)に太刀打ち出来ず、ギャング団はめいめいどんどん悪い方に転げ落ちていき…という展開です。

うーん。正直、自業自得感は否めないし、こんなアウト野郎は酷い目に遭うのが妥当だろ…と思って1本目で観るの辞めた方!是非完結編をご覧ください!ピエトロは遂に大義の為に動くのか…? A.動くから勧めてんだぞ!!

うん。まあでもやっぱり割と普通。タイトルやパッケージビジュアル、リリース形態の特殊さのせいで、何かスペシャルな作品のようなイメージが有りますが、基本的には普通に良く出来たコメディですね。ただ、三部作通して観れば思い入れも深まり意外と感動してしまうかも知れませんよ?個人的にはドラマ『監獄のお姫様』を完走した時とちょっと似た感動がありました。…というか、クドカンのトリッキーな脚本と、自分が事故的に(?)トリッキーな見方をしてしまった事が結びついただけかもしれませんが。

…逆どりのメメント状態で連作を観ると、普通の出来事がまるで伏線のように機能してきたり、予想外の楽しさは確かに有ります。でも、そのせいで逃している製作者の意図したエモーショナル展開は山盛りだと思われますので、やっぱり普通に頭から観ていく方がずっと良いと思いますね。

…あー、でも、遡って観たせいか、更にこの前日譚作品とか観たくなったなぁ。彼等の学生時代の『いつだって辞められる 崩壊する特進クラス』とか。バルトロメオはその頃からチャラいのかな?…なんならもう『いつだって這い出せる むつかるバブバブ軍団』とかね。