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Santa Maradona(原題)のチネマエッセのレビュー・感想・評価

Santa Maradona(原題)(2001年製作の映画)
4.1
ステファノ・アッコルシ(がまだ眩い若かりし頃)と今年急逝したリベロ・デ・リエンツォが演じる、まだ何者でもない若者の、何でもない無意な日々を、シニカルにコミカルにそして90年代っぽさ全開のあのスタイリッシュさで描いています。

なんというか私がこの映画を見て初めに思った印象は「『トレインスポッティング』っぽいな」というところ。

文学部出の高学歴だが少し性格が変わっていて就職活動に100社以上落ちているアンドレア、仕事はあるが、シチリアで発行されている新聞記事をコピペして、そのままトリノの新聞社に寄稿している記者というなかなかアコギなやり方でのらりくらり生きているバルト。この2人のなんでもない共同生活。なんでもないというよりかは、いつも危険と隣り合わせで綱渡りみたいな生活をしているのだけれども、その綱の上でとにかくのんびり日暮らし生活をしているかんじというか。

「ラン・ローラ・ラン」みたいな爽快な走り方のアッコルシも見ものですが、闇の中の光の如く、この映画で誰よりも良かったのはリベロ・デ・リエンツォ。「いつだってやめられる」シリーズでもコミカルな役を演じていましたが、この彼のキャラクターが非常にいい。2人のウィットに富んだ斜に構えた感じの会話、特にバルトのセリフ、こういう感じのセリフとか私は大好物でした。

サンタマラドーナとは、イタリアで神と崇められるサッカー選手の名前で、最初のオープニングで出てくる試合中マラドーナがハンドで反則をする。しかしそれを審判は見つけられず、試合後判明しても咎められずに点数が入ってしまう。(それが最近のパオロ・ソレンティーノの「E stata la mano di dio」につながるのだけれども)

このストーリーの主人公たちはもちろん神的存在ではないのだけれども、若気の至り的なものもあるのだろうか、彼らが起こす様々な犯罪は一切咎められずに終わる。とにかく若さが武器であった、そんなようなことを思わせる映画でもあります。
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