じゅぺ

ここに泉ありのじゅぺのレビュー・感想・評価

ここに泉あり(1955年製作の映画)
4.3
ここに泉あり、みた。戦後混乱期に高崎で市民オーケストラを結成するお話。音楽は人を笑顔にする。泉のように心も潤す。美しい音の調べが人と人をつなぐ瞬間の喜びは、なにものにも代え難い。しかし、その裏には諦めや妥協が隠れている。この国には、一生に一度しかオーケストラを聴けない人たちがいる

この映画のひとつ大事な視点なのは、生まれ育った地域や、住んでいる場所で、人生はがらりと変わってしまうということ。それは、山奥の小学校やハンセン病患者の施設の演奏会の場面に現れていると思う。芸術は人生を豊かにするという言説自体、芸術そのものへのアクセスが限られている人には残酷に響く

映画自体には関係ないけど、たびたびツイッターで揉めてることを思い出した。「映画館で見るべき」とか「IMAXでなければ価値がない」だったり、ホントに不毛なんだけども。それはともかく、住む場所によって同じ日本でも文化が違う、ということは、特に40年台後半の貧しい時代は深刻なんだと知る。

冒頭が高崎駅の買い出しの電車の時点で、そういう都会と田舎のちがいみたいなものは、最初から提示されていた。これは同じ今井正監督のキクとイサムでも描かれていた。田舎だからこそ顔見知りのハーフの子を可愛がりもすれば、逆に逃げ出せない壁を築くこともある。人が多い場所ではそれは全部逆になる
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