ジェイソン・ステイサムというと、「話なんかどうでもいいから、悪党をぶちのめしてください」と思っている感じの人が多い印象があります。しかし、『パーカー』と『ハミングバード』が好きなわたしからすると、こういう激渋ドラマ路線のほうこそ大歓迎。
冒頭、酒場でおっさんに絡むステイサム。おっさんのかつらをむしり取るものの、酒場の外での喧嘩では負ける。
「おいおい、どうしたんだ、ステイサム!」と思っていたら、実は美女にいいとこ見せたいおっさんの依頼でわざと負けていた。いやはや、ステイサム、やっぱり粋な男。
この調子でいけば「最高!」となるところだったのですが、彼が抱える闇を描こうとした途端に、「何だかなぁ……」という感じに。
なんか肝心のところが台詞で説明されるばかりで、描写がない。スローモーションもとってつけた感じで、さして意味がない。ステイサムの硬さが真っ直ぐな男ぶりを示す方向にばかり働いて、心の揺らぎが見えない。
スコット・フランクやジョー・カーナハンあたりが監督だったら、傑作になっていたんじゃないかな。