しまうま

ワイルドカードのしまうまのレビュー・感想・評価

ワイルドカード(2014年製作の映画)
3.3
 『ビッグ・ヒート』をジェイソン・ステイサム主演にてリメイクしたギャング映画。

 元特殊部隊所属のニック・ワイルドは今はラスベガスの用心棒として、酒とギャンブルの日々を過ごしていた。ある日、初めてラスベガスに来たキニックという若者から街の案内を頼まれる。いつもの「くだらない仕事」と思いながらも引き受ける中で、旧知の女性がひどい事件に巻き込まれたことを知るーーというのが大まかなあらすじだ。


 これは主演はステイサムではあるけれど、実はキニックの物語だというのが僕の結論だ。初めて都会に来た若者が精一杯の虚勢と見栄を張る、その姿はまさに現代っ子をそのまま絵に描いたような「いんちき」な様子しか見えない。カジノでは酒じゃなく水を頼む「空気の読めなさ」も、確かに頭が良くて優秀かもしれないけど、どこか人生を充実に生きることができていない不安げな一面を写しているようにしか見えない。
 でも、そんな彼もステイサムの背中を見て、ラスベガスのすべてを知っているような「イカした」男でさえ、どこか不安を抱えているという、大げさに言えば人生の真実的なものに気づく。
 僕はとてもキニックほどうまくやれないし、彼ほど優秀な人間でもないけれど、彼のように成長しようと思えるくらいには、すごくシンパシイを感じることができた。


 アクションはほんのスパイス的な要素として、クールなステイサムのファッションのひとつとして楽しめる内容だった。終盤の「大物とのやり取り」にも終始動揺した表情を見せないステイサムが、キニックとの交流に人間らしい表情を見せるその一面に、素敵なものを見ることができたという満足感に浸ることができる。

 良い映画だ、と思う。
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