イチロヲ

(秘)極楽紅弁天のイチロヲのレビュー・感想・評価

(秘)極楽紅弁天(1973年製作の映画)
4.5
江戸の片隅でその日暮らしをしているフーテンの少女(片桐夕子)が、旗本の後継ぎとなる青年(山本涼)と、身分違いの恋に落ちてしまう。貧困層の一蓮托生をエネルギッシュに描いている、日活ロマンポルノ。題名は「あかべんてん」と読む。

初期シナリオでは部落の娘と武士の青年のメロドラマだったのだが、部落解放同盟から抗議を受けたことにより、部落の娘をヒッピー族に置き換えることになった、という逸話あり。しかし、非人を意味する「水色」のイメージが、暗喩として残されている。

男を知らないおぼこい少女(片桐夕子)と、誰にでもヤラせる尻軽娘(芹明香)の「アホ娘コンビ」に訴求力が凝縮されている。アッパー系とダウナー系が融和した、中毒性のある芝居を楽しむことができる。

恋物語は定石通りだが、根底にあるのは反体制の精神。平賀源内(長弘)が登場するのは、主人公と同じくアウトサイダーの立場にいるため。「この世は神も仏もない。生きていることだけが本当のことだ」など、ヒッピー的な台詞まわしが印象に残る。
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