グラノーラ夜盗虫

日本のいちばん長い日のグラノーラ夜盗虫のレビュー・感想・評価

日本のいちばん長い日(2015年製作の映画)
3.5
過去に広島平和記念資料館を訪ねたが、全く当時の日本政府内の意思決定についておそらく意図的に言及がされておらず、また今となっては大切なパートナーとなった米国を強く糾弾することが憚れることも相まってか、あたかも原爆が恐ろしい自然災害のように描写されており、強い違和感を覚えた。なぜポツダム宣言をもう少し早い段階で受諾しなかったのか、2度目の原爆が防げなかったのか、この資料館は直接的な答えを提供してくれなかった。故に、この辺りの日本政府の意思決定プロセスに関心があり、教養のためにこの映画を観ることにした。その目的から考えると、2時間半程度で主要人物と全体像が掴めたため、十分良くできていた。

日本語は自分の母語にも関わらず、自身のリスニング能力に疑問を抱くような早回しの台詞に圧倒されたが、観客に迎合しない作品に好感を抱く質の私には好ましく感じた。しかし字幕をつけるべきだった。

公的セクターの端っこで働く私としては、なるほどこの意思決定プロセスは令和の現代日本においても似たようなものだなと思いながら鑑賞していた。特に昨今の政治の決定などを見ると、少なくとも政治の世界における意思決定については、時代に応じて改善・進化していくということはないのではないかと感じた。

あとめんどくさいフェミニストとしては、切腹はtoxic masculinityの極地だなとの感想を得た。阿南陸軍大臣は大変な愛妻家で子煩悩という描写が徹底されている中、奥様(綾子さん)や家族の心を徹底的に破壊するであろう自害という選択肢をとるあたり、大きな矛盾を感じた。そう個人に決定させ、それを周りに受け入れさせてしまう価値観が浸透していた時代が存在することが恐ろしいばかり。

この映画に熱中できる人は霞ヶ関で長く働けると思う(私は無理です)