Reznor

日本のいちばん長い日のReznorのレビュー・感想・評価

日本のいちばん長い日(2015年製作の映画)
4.0
1945年7月26日のポツダム宣言発表から、8月15日正午の玉音放送・終戦に至るまで、特に14日からの長い1日の日本政府の動きを描いた映画。多くの方のレビューにもあるように、登場人物の説明や、その時の世界情勢の説明などは一切ないまま淡々と物語が進行していくので、予備知識がないと少し難しい内容。実際の心境なども綴られている原作を読むことを一番オススメしたいけど、wikiなどを見て少しでも内容を把握しておくとスッと入っていけると思う。

とにかく俳優さんたちの演技が素晴らしかったので、それだけでも見る価値があるんじゃないかと思う。ダントツで若い松坂桃李が演じた畑中少佐役は特に難しい役だったけど、思っていた以上に良かった。今後もっと演技に厚みができたら将来が楽しみだなと思える俳優さんだな。でもやはりベテラン陣、さらに脇を固める舞台俳優陣たちの演技が素晴らしく、特に井田中佐役の大場泰正さんは本当に素晴らしかった。

宮城事件のことを初めて知った20代前半くらいの頃は、こんな言い方は失礼だけど、ただ戦争がしたくてしたくてたまらない人たちが暴れた事件だと思っていたので、事実はそんなに単純ではないんだと言うことを知った時、あぁ歴史はやはり複雑で、現代人である自分の物さしだけで物事を考えてはダメなんだと改めて思わされた。そしてアレやコレが、あと少し遅れていたら、あと少し違っていたら、本当にその後どうなっていたかわからないという事実に、70回目の8月15日を無事迎えられたことの意味を再確認させられた。

普段、空なんかちっとも見えない高いビルだらけの場所で仕事をしているのだけど、今日送り盆で訪れたご先祖のお墓の上に広がっていた空が、広くて青くて美しかった。1945年のあの日の空もこのように美しく、このように蝉の声が響いていたんじゃないかと思ったら、なんだかグッときてしまった。原作にも、ご聖断が下った後に「(焼け跡の)廃墟の上の星空は一か月前と同じであった。一年前とも同じであり、これから何千年の後も同じであろう。」という一文が出て来る。果たして日本人は、千年後も終戦記念日に黙とうを捧げていられるのだろうか、なんてことを真剣に考えた日だった。
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