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シチズンフォー スノーデンの暴露のmickeyのレビュー・感想・評価

4.0
戦わないジェイソン・ボーン!
ガチのエネミー・オブ・アメリカ!

本作の大半はスノーデン氏のインタビューシーンですが
ものッ凄い緊張感!

これ凄いわー、どんなサスペンス映画やスパイ映画も敵わないわ。
何故なら、この緊張感は本物だから。
本作はアメリカ政府の重大な不正を内部告発しているので、カメラを回している時点ではスノーデン氏や監督達も命の危険があります。下手したら、次の瞬間に特殊部隊が突入してきて全員が殺され、カメラも闇に葬られていた可能性もあると考えたら、こうして観ることができるのは奇跡。

本作は情報量が多いので、事件の流れを知っていると理解しやすいと思いますが、経緯はこうです。
冒頭でローラ宛ての手紙が読まれます。
ローラとは、本作を手掛けたローラ・ポイトラス監督のこと。

ポイトラス監督は以前、イラク戦争を題材にしたドキュメンタリーを撮り、そのことでアメリカ政府から監視対象いわゆるブラックリストに登録されていました。スノーデン氏は彼女の経歴から「内部告発を撮ってくれる適切な人材」と考え接触してきたのです。
要は“映画監督呼んで米政府の悪事を暴露してみた”ということです。
だから、暴露のニュース速報が流れた同時間帯の様子も作品内に収まっています。

そしてスノーデン氏、NSA(国家安全保障局)に勤めていた経験からアメリカ政府とCIA、メディアがどう動くかということを常に予測し考え、二手三手先を読んでいるのが伝わってきます。
ジェイソン・ボーン以上に頭が切れます。

ちなみに『ボーン・アルティメイタム』では“エシュロン”という通信傍受システムが登場しましたが、スノーデン氏が暴露したのは、アメリカ政府による全世界でのインターネット傍受。まさか映画と同じ展開になろうとは。
スノーデン氏が内部告発した内容は、世界の在り方を変えるほどの出来事だったといえます。

恐ろしいなと感じたのは、ネット情報、カード履歴、通話内容などが全て傍受されているということ。悪用すれば、無実の人を社会的に抹殺することが可能ということです。

他にも、個人情報や盗聴に関する驚きの事実などが語られます(これ、凄く書きたいけどネタバレになるので書けない)。こんなヤバイ秘密を聞いてしまったら、僕も誰かに消されるんじゃないか?と錯覚してしまう感じ。
そして、ラストシーンはもう映画顔負けです。
事実は小説より奇なり。

それにしても、良くこれが公開できたなと驚くばかりです。しかもアカデミー賞ドキュメンタリー賞受賞!!
暴露の内容に背筋が凍るような気分ですが、この作品が受賞するということは、まだアメリカの良心があるということで少し救われます。

賞味期限のある内容なので、ネット社会や国際情勢に興味のある方は早めの鑑賞をオススメします。
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