園子温監督作のSFファンタジー映画。
ほとんどがセピア色の映像なのが印象深い。
主人公が乗っている宇宙船のデザインとも相まって、どこかレトロ感を感じる。
このアイデアは91年くらいから監督が構想していたらしく、彼の作家性全開で作られてるよう。
ある程度情報を書きますが、興味があってこれから観る方は読まないで観た方がいいかも?
僕は何も情報を仕入れないで観たので結構面白かった。
子供ようなコンピューターの音声が宇宙空間に響いているスタート。
劇中の日にちの移り変わりが曜日のテロップで分かる。
鈴木洋子という女性が、昭和の日本家屋みたいな宇宙船に乗っている。
内装もレトロ感全開の静かな空間。
この人は常にささやくような声しか発しない。
そして航海日誌のような音声記録をつけている。
やがて、配達員の仕事をしていること。
そして彼女が実は人間でない事がわかってくる。
室内照明に入り込んでいる蛾が妙に印象的。
この未来の世界ではマシンが8割、人間は2割になっている。
人間が敗北してしまった世界だが、機械の限界のようなものも見て取れる描写もあった。
思い出を運ぶ配達業をしている鈴木洋子さん。
ロケ地は福島。
無人の街はありふれた日本の街並みだが、セピア色の画面との組み合わせでどこか別の惑星のようにも見える。
特に最後に立ち寄る惑星のビジュアルが凄かった。
まるで人生の走馬燈とでも言おうか、人生の全てがそこに詰まっているような表現は何かを連想させる。
監督インタビューを読むと、これは3.11に限定されたイメージではなく全てをひっくるめた物なんだとか。
最近の園作品のようなエログロは無く、作家性全開のアートっぽい映画。
僕はアート映画は基本苦手だけど、中には不思議と引き込まれる作品もある。
それはなぜかは僕のスペックでは上手く語れないけれども。
ただ、この作品はいつもの園作品以上に人を選ぶでしょうね~。