赤いジャケット

パリよ、永遠にの赤いジャケットのレビュー・感想・評価

パリよ、永遠に(2014年製作の映画)
3.5
第二次世界大戦末期、連合軍がフランスの首都パリへと迫る中
ナチス総統ヒトラーにパリを燃やしつくせと指令を受けたドイツ軍人の決断とは?
まず舞台劇として誕生した本作を映画化したのは、ドイツの名匠フォルカー・シュレンドルフ
悪魔的な男オスカルが歴史の波に乗って身近な人々を破滅へと追いやる様を描いた映画【ブリキの太鼓】を撮った監督ですね
本作何が良いって、役者が良い
舞台劇で主演した二人が映画でも主演したって事みたいですが、舞台で繰り返し繰り返し演じたせいなのか
本当に軍人であり、外交官である、という風に映っていた
かたくなな軍人の心をあれこれ手管を駆使し解きほぐしていく外交官の手腕に惚れ惚れするし、あくまで兵隊としての任務は忘れない軍人の姿もカッコいい
二人とも見た目はおじいさんって位の人なのにね
推理小説の倒叙形式と同じで、我々は歴史的な事実としてパリは燃やされていないという事を知っているわけで
いかにその決断に至ったかが見せ場である本作
緻密に演出が組み立てられているのが面白い
外交官が行動を起こす動機は冒頭、瓦礫の山と化したポーランドの首都ワルシャワの記録映像を観客に見せる事で納得させられる
ワルシャワに続いてパリまでも破壊させてはいけない
軍人は引き出しから銃を出し装填し机の上に置く、外交官が下手な真似をしたらいつでも撃ち殺せる様にですね
後半、外交官は引き出しを開ける事になるんですが、あくまでもサラッと軍人を射殺出来るチャンスだったと描く
そう、あくまでもサラッとなんですね
ナチスのSSの態度の悪さに顔をしかめる軍人の描写や
撤退しなければいけない状況なのに、あくまでもメイクにこだわるパリ娘など
サラッと当時を生きた人たちの心情や思いみたいな物が織り込まれている
匠の技を堪能出来る一作なんじゃないでしょうかね、本作は