ひげしゃちょー

風に立つライオンのひげしゃちょーのレビュー・感想・評価

風に立つライオン(2015年製作の映画)
3.9
泣き所はたくさんあるけど泣かせる演出を極力抑えて淡々と島田航一郎という人物がどんな人物だったのかのナレーションを挟みながら物語は進んでいく。 ケニアの現地の子供達がとても良い。プロの子役には決してできないだろう輝きを放っている。同様に長崎五島列島の素人のお婆ちゃん達もセリフはたどたどしいが妙にリアルで異彩を放っている。 本編とは関係ないけどマサイの踊りなんかもとてもよかった。 凄くシリアスなシーンで演者の顔に虫が止まっているのもアフリカならでのリアリティでよかった。 「頑張れって言葉は人に言うことじゃない。あれは自分に言っていたんだ。」という言葉が妙に突き刺さった。あの言葉に島田航一郎という人物の人となりが伝わってくる。 和歌子もあの言葉で航一郎に惹かれたんだと思う。台詞にしてはいないけど航一郎の背中を見つめる目が愛しい人を見守る目だったもの。言葉に出さずにそういった感情を演出できる手腕はさすが。 月並みだけど一番の泣き所はミケに対して「9人殺したなら10人の命を救え」というシーン。 三池組に久しぶりに石橋蓮司が出るということで満点をあげたいぐらいだがそれを抜きしてもよかった。 戦地での負傷者の腕を切断するシーンや少年兵によるドンパチではお得意の三池節が全開だった。 貴子の現在があまり老けていなかったから時系列が分かりにくかったのはやや不満だけど、総合的に見ればあまり問題ない。 映画で描かれている内容と30年近く前の曲の歌詞に矛盾が生じているのが感慨深い。