HicK

スター・トレック BEYONDのHicKのレビュー・感想・評価

スター・トレック BEYOND(2016年製作の映画)
4.2
《キャラの魅力が最高潮。
愛が溢れるオールスタームービー》

【新監督、トレッキーによる脚本】
監督はジャスティン・リンへと代わり、カメラワークが"低速ジェットコースター"のごとくグルグル旋回している(宇宙やヨークタウンのシーンは秀逸。でも人物メインのシーンでは余計に感じたり…)。

脚本にはスコッティ役のサイモン・ペッグが"トレッキー代表として"加わった。彼の影響なのか、今作はストーリー以上に全キャラクターのイキイキとした描写が魅力だった。そして、今作は初めてリメイクでは無くオリジナルの悪役を起用。そこが「BEYOND」たる所以なのかもしれない。

【オールスタームービー】
正直、ストーリーに関してはシリーズで最もシンプルかつデジャヴ感のある展開で、悪役の動機もフワッとしていた。が、この新シリーズのレギュラーキャラクターたち全員が輝く"オールスタームービー"として満足感があった。中盤での別行動シーンをはじめ、サブキャラたちにも時間を割き見せ場を多く設け、ファンに捧ぐお祭り映画のような仕上がりに。トレッキーであり、出演者の1人としてこのシリーズとキャスト陣を愛するサイモンならではの焦点の当て方なのかもしれない。最後に流れるいつものナレーションを全員に言わせた事もその表れだと思う。最高のファンサービス。

【輝くサイドキャラクターたち】
疲労感たっぷりのカークと一緒に行動する若くエネルギッシュなチェコフ。敵に囚われ脅威を目の当たりにする真面目なウフーラとスールーのコンビ。真実の鍵を握るジェイラと遭遇するスコッティ。終始笑わせられたスポックとボーンズの掛け合い。群像劇大好き人間としてキャラの魅力が詰まった今作は最大級のご褒美。愛が溢れまくっている。中でも(シリーズ全作に言える事だが)、ボーンズの使い方が素晴らしい。いちいちセリフが面白い。 また、驚く事に初登場のジェイラも良かった。

雲状の敵戦艦をどう倒すかのディシジョンメイキングのシーンもカッコいい。全員が自分の専門分野に関した案を持ち寄り、セリフをバトンのように繋いでいく。シリーズの醍醐味が詰まったシーンだった。

そして、R.I.P.アントン。

【回を追うごとに成長するカーク】
シリーズ通して言えば、カークの成長がグラデーションになっているのも好き。チャラかった彼がキャプテンとして自己犠牲を繰り返し、今作では日常での喜びを感じなくなるまでに発展。切なくもあり哀愁すら漂う成長。

【スタートレックの魅力】
新シリーズを見た限りの話だが、スタートレックの魅力はアクション以上にキャラクター間の掛け合いなんだと思う。「仲良しこよしでは心地悪いが根底では信頼し合っている関係性」「皮肉を言い合う彼らが脅威と向き合った瞬間、即座にリーダーと部下の関係性に切り替わる」「打開策は全員で考える」、その関係性が熱いドラマを生み、いい意味でぎこちないコメディも生む。今作はたぶんそんな醍醐味を最優先にしたプロットなようにも思う。

【音楽、ジャッキーノ様】
毎度のように音楽が素晴らしい。今回は特にヨークタウンのテーマが壮大で感動的。何故だか分からないが、毎回、この新シリーズのメインテーマ曲が流れるたびに涙が出そうになる。特にエンタープライズ号に合わせた使用とか鳥肌が立ってしまう。もはや病気か。彼のおかげで、エンタープライズ号が1人のキャラクターになっている。(今回はちょっと出番が少なくて残念)。

【総括】
今作は物語としては前2作に劣るものの、それ以上に脚本や演出から伝わるキャラクターへの愛が1番の魅力だった。これぞスタートレック愛。そしてキャラの掛け合いも素晴らしい今作は1番スタートレックっぽい作品なのかもしれない。(このシリーズしか知らない自称新規トレッキーだが)。カークたちに会いたくなったら、自分は間違いなく真っ先に今作を見る。そんな安定のホーム的な作品。

シリーズ3作品全て面白かったので、早く続きが見たい。ぜひ、このキャストで!早くみんなに会いたい。
HicK

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