たた

あんのたたのレビュー・感想・評価

あん(2015年製作の映画)
3.8
監督や編集の力によるのはもちろんとしても。

やっぱ、演劇という芸術に魅了されるのは良い邦画を観たときなんだなあ。
外国映画の俳優さんがどんなに素晴らしかろうと、自分の中に原語が根付いてなければ演技について語りようがないと思ってるので。

表情や体術は別として、原語のニュアンスや発声の機微を知らずに外国俳優の演技力を語る人間を僕は信用しません。

ガラスの仮面で、対象を演じることは対象になることではないのだ、と主人公北島マヤが諭される場面があるのですが、
この映画の登場人物達はそんな真理さえも超えたところにいるように感じられます。
特に樹木希林さんなんかもう、もちろん役作りはされてるだろうけと、演じてます感が一切ない。

ラストの、木の幹にもたれている姿は、撮り方も相まって、静かに心を満たしていくような柔らかな力強さ…変な言い方ですがゾッとする画です。
年齢とか経験とかいうと陳腐だけど、ベテランさんはいるだけで何かを醸し出すように思う。

良い俳優さんは全盛期で死んでいくのですね。

…内容に触れてないですけど、グルメまんが的サクセスストーリー!かと思いきやそうではないですよ。
展開や感情の波ではない何かに心を揺り動かされるような、やわらかい映画だと思います。

本筋じゃないけどどら焼き屋でダベってる女子中学生達がすごく自然でよいなあ。ほか総じてみんな自然で、悪い意味じゃないけど演じてる感を感じたのは浅田美代子くらい。
たた

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