クリーム

あんのクリームのレビュー・感想・評価

あん(2015年製作の映画)
4.1
はぁ、いい映画だった。樹木希林さんの登場で場面が明るくなり、発した言葉で温かくなった。そして、永瀬正敏さんも抑えた演技が素晴らしく、終盤は彼の涙に崩壊した。悲しい部分を強調する事をしないので、逆に悲しみを想像で膨らますのが良かったです。そして、心に温かさを残す良作でした。

千太郎はどら焼き屋で、雇われ店長をしている。 常連は近所の中学生3人と同級生ワカナ。 ある日、徳江という老婆がやって来て、 店で働かせて欲しいと言う。「手が不自由なので、時給は半分でいいですから」という彼女に千太郎は、一旦は断るが、彼女が置いて行ったお手製のあんこを食べ、その美味しさに徳江を雇う事にする。 翌日、夜明け前からあんこの仕込みにやって来た徳江を手伝う千太郎。 その日から、あんこが評判となり、人気店になった。しかし、店のオーナーがある噂を聞き付けて、千太郎に徳江の解雇を言い渡すのだった。



ネタバレ↓



徳江は、かつてハンセン病を患い、全生園で暮らしているとオーナーの耳に入った。暫く考えさせて欲しいと答えた千太郎だったが、心ない噂に客がピタリと来なくなった。徳江は、敏感に察知し、自分から去ります。千太郎に迷惑かけてごめんなさいと手紙が届きました。
ワカナが、カナリアの籠を抱えて、千太郎を訪ね、アパートでカナリアが飼えなくなったので、徳江さんに育てて貰いたいと言う。そして、2人は徳江さんを訪ねます。徳江さんは、少し弱っていたけど、千太郎に楽しかったとお礼を言い、自分の過去も少しだけ話します。千太郎は耐えきれず涙を流した。
帰るとオーナーが、アホな甥っ子を連れ、改装してお好み焼きとどら焼きの店にすると言い、すぐに工事が始まった。
千太郎は、徳江さんに手紙を書き、自分も徳江さんとは違う理由で外に出られなかった事を綴ります。それは、喧嘩をして、相手に重い障害を負わせて刑務所にいたからでした。その間に母が亡くなりましたと…。
再び、千太郎とワカナが徳江さんを訪ねると3日前に亡くなっていた。施設の友人にカセットテープとあん作りの道具を託していた。テープからワカナにカナリアが、ここから出してと言うから放したと事をあやまり、店長さんは私と同じ目をしていたから声をかけた。私に子供がいたらきっと店長さんぐらいだったと…。施設内に墓はなく亡くなると木を植える。徳江さんの木はソメイヨシノにしたのだそう。

私は、舞台の多摩全生園のお隣の市で、幼少期から30手前まで、過ごしたのですが、高校生の時に存在を知った程度で、その後、ニュース等で詳しく知る事となりました。近くに住んでいても知らなかったし、ハンセン病に対する正しい知識と理解を国民全体に教えるべきだと痛感しました。

映画ですが、樹木希林さんは当時、既に癌で体調がすぐれない中、気丈に演じられ、体調が悪い事すらも演技としてしまったと言うエピソードに女優魂を感じました。まさしく渾身の演技だったと思います。浅田美代子さんのキャスティングもピッタリ過ぎて、本気でイラッとしました。
ハンセン病や施設について詳しくは触れていませんが、この映画をきっかけに皆が知り理解を深めれば良いのですよね。押し付けがなく良い作品でした。

*leylaさん、ありがとう♡
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