こより

あんのこよりのレビュー・感想・評価

あん(2015年製作の映画)
3.7
ハンセン病の差別に関するお話。
タイトルの「あん」は主人公が開く、町のちっちゃなどら焼き屋さんに、ハンセン病患者役の樹木希林が訪れて、ものすごく美味しい餡子を作るというところから。

樹木希林は演技が上手いのか、もうあのままなのか分からない!笑
主演の永瀬正敏がいい味出してた。
役柄にぴったりな顔つき。
そして、見終わって知ったけど、出てくる女の子は樹木希林の本当の孫なんだね。
孫と会話してる時の樹木希林なんかそこだけ違うなぁ、柔らかいなと思ってたらそういうことか。
ハンセン病という差別と戦う…わけではないけど、それでも懸命に自由に手を伸ばすおばあさん役を樹木希林がいい味出してた。

私の通ってた中学では隔年でハンセン病患者の人に来ていただいて講演をしてもらうんだけど、
劇中の樹木希林なんて優しいもので、
当時かなりショッキングな体験だったことを思い出した。
口もままならないので、ゆっくり喋る声を聞き逃すまいと生徒全員が必死で、
ホールがシーンとして緊張感に包まれていたけど、
それでもほとんど聞き取れなかった。
それでも聞き取れないことにまたそれぞれが動揺している異様な雰囲気だった。
映画のハンセン病の描写はあくまで軽度なので、もっと知りたい人はぜひ色々調べてほしい。

この映画はノンフィクションだけど、丁寧に取材を重ねて作っているんじゃないかと思うと、こうやって一般の人じゃできないことをやってくれる映画っていうのは大切だと思うし、
観客動員はなくとも、売れなくとも、作り続けるべきだと思うし、
DVDでずっと誰かの日の目に当たるといいなと思う。

ただし…
映画的な部分の批判をさせてもらうと
中盤の主人公のモノローグは自分だったらばっさりカットするな、と思った。
あのシーンがまるまる無くても、もう視聴者はもうなんとなく分かってるし、
主人公に肩入れしてほしかったのかもしれないけど、それが蛇足になってしまっている。
詳しく説明する必要はなかった。
その後それが活きてくるのかなと思ったけどそうでもないし。
主人公を立てなくても、それまでのバランスでちょうど良かったのに。
まるまるカットしても成立するというシーン(主人公の感情の描写がされているわけではない、あそこで入れる意味が無いなど)を入れてしまっているのは最もダメなことだと思う。
いい映画だけにもったいない。
あとラストの主人公のセリフも意味が薄いので、わざわざ入れなくて良かったと思う。
その2点がなければもっと点数を高くしたかった。

かなしいけど、
かなしいばっかりじゃなくて、
勇気をもらえるような映画なので、
ぜひ見てほしい。
こより

こより