井出

あんの井出のネタバレレビュー・内容・結末

あん(2015年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

テーマはあん。
あんが鍵を握っている。あんとともに店に来る徳江さん。徳江さんのもつあんの甘さのような、ほっこりする優しさ。しつこいくらいに泣かせてくるねっとりしたストーリー。それを、強いメッセージとともに投げかけてくるからもう、泣くしかない。
風景もきれい。春はあけぼのから始まり、四季とともにときは流れている。そして、桜が象徴するように、徳江は散っていく。人生を象徴するように、四季を鮮やかに写していく。日本的美。最後、秋の風を無音で捉え、虚しさとノスタルジックな雰囲気を表現する。
河瀬直美の時間の描き方は、やはり断片的であるのに、しかし時間の連続性を意識できるという、技術。最小限のヒントで、それを可能にしつつ、だからこそ、引き込まれ、凝視して話を追わざるを得なくなる。空間もしかり。そしてその間に入る風景の映像は小津的余白。あんを作る感じは是枝風なのかな。技術はやっぱりすごい。
電車が通って桜が舞うのと花や葉に手を振るのが個人的に好き。少しは少しよと、水飴は笑った。
井出

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