クロ

バケモノの子のクロのレビュー・感想・評価

バケモノの子(2015年製作の映画)
2.0
この映画にはバケモノが確かに登場するが、バケモノの世界は造形以外まるでバケモノの世界っぽくない。バイトなんて単語も飛び出すし、人間は心に闇を抱えているとか言いながら主人公はこの世界に来た当初イジメを受けるし、人間の世界とそこまで変わらないじゃないかと思ってしまう。

細田守は、おそらく「子を持つことで親が育つ」とか、「子は親だけでじゃない様々なもので成長する」とか、そういう描きたいテーマや理屈が先にあって、そのあとにバケモノというキャラクターを生み出したんじゃないかと思う。

こういう「親と子」のテーマは、『ムーンライズ・キングダム』、『MUD/マッド』、『そして父になる』、『チャッピー』など様々な実写映画で撮られている。『チャッピー』なんかキャラも話もアニメっぽい話とキャラなのに実写で成立させている。そんな中でこの作品はこれらの作品よりも鮮烈なテーマで物語が描けていただろうか。アニメならでは、ファンタジーならではのワクワクがあっただろうか。俺は何もなかったと思う。映画館でこれを観ながら、俺は何を観に来たんだろうなあ…とか考えてしまったよ。

細田守は間違いなく日本のアニメ映画監督の中でトップの実力を持つ人だ。語りたいテーマがあるのはわかるけど、まずアニメの世界を、ファンタジーの世界を構築することから物語を作ってほしいなと思う。監督作『時をかける少女』なんか、バケモノなんて出なくても最高にファンタジーだったよ。時間という概念の中での彼らの結末に涙したよ。この映画はそういう、この設定ならではの感動というものが何もないように感じた。

最後に一つ。エンドロールの参考文献だけど、かっこつけてないで『あしたのジョー』も入れたらいいんじゃないですかね。
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