うたまるさん

怒りのうたまるさんのレビュー・感想・評価

怒り(2016年製作の映画)
4.2
圧巻の演技力!

八王子夫婦惨殺事件。殺害現場に「怒」の血文字を残した指名手配犯山神一也は顔を整形しながら逃亡を続けていた。

その事件から1年経ち、東京新宿、千葉県の漁港町、沖縄の離島にそれぞれ素性の知れぬ男が現れる群像劇。
そのぞれの物語は全く交差しないのだが、同じ時の中で人と人との出会いやつながりをしっかり描いた傑作。
何より凄いのは出演者の面々。それぞれの場所で展開されるエピソードに登場するのは全て主役級の俳優ばかり。また、その人たちのシリアスな演技がたまらない!クゥー!

ストーリーについても、単に犯人捜しのミステリーではなく、それぞれの町に突然現れた見知らぬ男とその人物に関わる人たちとの物語が丁寧に描かれているので、どこかに偏った感情移入をすることなくきれいに並行して鑑賞することが。できます。

特に圧巻なのは女優陣。それぞれのエピソードにキーとなる女性がいて、千葉県の漁港町では宮崎あおいが演じた愛子、沖縄の離島では広瀬すずが演じた泉、そして東京新宿では男性になってしまいますが、ゲイの男を演じた妻夫木聡。
それぞれの役者さんたちが感情をむき出しにした熱演にガツンと心を奪われ、映画の中に完全に引き込まれてしまいました。

余談ではありますが、私自身が韓国映画にはまったのも日本の映画が面白くなくなってしまったからで、どれを見てもイケメンアイドルの男子とテレビで活躍しているきれいな若手女優が織りなすチープな恋愛映画が主流になってしまい、ストーリーや演技力よりも音事協に属する事務所が売り出したいビジネスのためだけに存在しているようにも思えてしまったからなのですが、いやいやこの映画はかなり骨太なしっかりと軸のある作品に仕上がっているように感じました。

本当はもっとストーリーに沿った感想を書きたかったのですが、あまりに気に入り過ぎて大きなネタバレを披露してしまいかねないので今回のレビューはここまでとさせていただきます。

見ごたえのある作品なので、成人の方ならすべての方にオススメです。
うたまるさん

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