ケンジモンデン

怒りのケンジモンデンのレビュー・感想・評価

怒り(2016年製作の映画)
4.7
「怒り」とは。
エンドロール、それをずっと考えてました。僕にとってのその答えは、最後にするとして。

良かったです。
俳優陣、誰一人も欠かせない存在感です。誰が主演だ?と思うほどです。

特に、疑惑の松山ケンイチ・森山未來・綾野剛。この3人のミステリアスが物語を狂わせるわけだけど、よくこの「あれ?よく見たらこの人似てるかも…?」な3人を揃えたなと。
そして揃えたら揃えたで3人ともすごい陰のある演技で。

他出演者も書きたいけど書ききれないので割愛しますが、渡辺謙のお父さんも、宮崎あおいのちょっと変わった娘も、妻夫木聡の隠れゲイも、すずちゃんも、辰哉くん(←役名!)もとにかくみんな良かった。池脇千鶴のお節介おばちゃんもまた良かったなぁ…。高畑充希のあの感じも。割愛できてない!
とにかく素晴らしい俳優陣に固められて、贅沢な作品でした。


印象に残ったセリフはたくさんあるけど、中でも
「あんたは大事なものが多すぎるんよ。歳を取るほど、大事なものは減っていく。」
2回出てくるこのセリフが特に響く。(2回目は泣きましたが…。)
前作「悪人」では、柄本明演じる被害者の父親が呟く
「今の世の中、大切な人がおらん人間が多すぎる」
というセリフがその作品のアクセントになっていて、強烈に頭に残っていました。
なので、今回のこのセリフは一見真逆のように聞こえて驚きました。

でも、両方とも真実なのかもしれない。本当に大切なものを見極められないまま、中途半端に大事なものがやたら周りに多くなっていく。そんな自分に気づいた時、そんな自分が悔しくてたまらなくなる。
そう考えると、この映画に溢れる「怒り」のほとんどが他者に対してのそれではなかった。自分が分からず、他人を信じれず、諦めてしまう。そんな自分へのあても無い、どうしようもない、いたたまれない感情も、「怒り」と呼べるのだと。

一晩たってじわじわと辿りついた答えですが、それぞれの答えがある映画だと思います。
希望も残されていて、悲しいだけの映画ではない。観て良かったです。