かえで

シン・ゴジラのかえでのレビュー・感想・評価

シン・ゴジラ(2016年製作の映画)
4.7
映画を観て、ここまで「楽しい!!!」と思った作品って久しぶり、いやむしろ初めてかも?!!もうとにかく楽しくて楽しくて最高!!ゴジラなんて子どもの時から興味を持ったことなんて一度もなく、今回も全く観る気もなかったのですが、いやはや恐れ入りました。よく知っている街が次々とゴジラに破壊されてゆく景色、たぶん子どもの頃にみていたら怖いと思ったのだろうけど、何故だか爽快で興奮してしまう不思議。めちゃめちゃ面白かった!!
まずキャストの豪華さ。主要キャストはもちろんですが、ほんの数秒、しかもセリフも一言あるかないかぐらいのエキストラのような登場人物にも主演級のキャストを起用してて、しかもその使い方がそれぞれめちゃくちゃ上手い!これだけでももう十分に一見の価値ありだと思います。特に片桐はいりさん、最高ですね…!!
独特のカメラワークも面白いし、オタク心をくすぐる名ゼリフたち、所々に監督の奥様・安野モヨコさんの絵やキャラクターがさりげなく映ったり、どの局も災害情報を放送してるなか一局(おそらくテレ東)だけぶれずにアニメを放送してる、とか、そういう細かい演出も非常に楽しかったです。
もちろん大筋のストーリーも本当に面白くて。虚構であるはずのゴジラがもしも日本に来たらきっとこうなるんだろう、と自然に思わせるような作り込まれ方。度重なる会議シーンでは聞いたこともない専門用語が早口で飛び交うのに、「こういう流れになったんだな」と理解させる演出も見事。一部で本作をご覧になった政治家の方々が「こういう事態が発生したらああいう段取りにはならない、全然リアルではない」等々仰っているのを目にしますが、別に現実との乖離の有無というのは正直どちらでも良くて、そんなことより現実ではあり得ない事態を「こりゃリアルだ!」と観客に思わせる監督の手腕が見事なわけです。
外ではゴジラによる被害がどんどん広まっているというのに、何度も繰り返される会議や総理レク、無意味な有識者会議シーンはものすごく滑稽に見えてしまったし本作のギャグパートでもあると思うんだけど、どんな事態であっても常に「皆んなで協力」、という精神が良くも悪くも日本の姿。スーパーヒーローが街を救うわけでもなければ有能な科学者がゴジラの倒し方を発見するわけでもなく、地道にコツコツ、話し合いを重ねて意見を出し合って最善策を見出してゆく。だからこそのドラマチックさがあり、グッとくる場面も沢山。一人一人が、それぞれの立場で最善を尽くす姿に胸が熱くなりました。良いところも悪いところも全てひっくるめて、どうしようもなくこれが日本なんだと、日本人という国民性なんだと、そう訴えかけてくる作品。そのうえで、「がんばろう日本」を感じられる強いメッセージ性。もう最高です!!!
しかし、それだけでは終わらないのが流石の庵野監督。本作には様々な謎要素もあって、結局解決されないまま終わってしまうものも多々。それらが何を意味しているのか?真相は何なのか?はたまた答えなどないのか?鑑賞後に色々と考察を巡らせる楽しさもあります。全て説明されない面白さ、なので裏を返せば分かりやすい作品を好む方には向いていないかも。多かれ少なかれオタク心のある人の方が本作を楽しめる気はします。
唯一の不満(?)点としては、地方に住んでいて首都圏近郊に一切馴染みのない方々にとっては、この作品の面白さが半減してしまうだろうな、ということ。「普段生活している街があんなことに!」という面白みがあるのとないのとでは、楽しめ方が違ってしまうんではないかな…。あと、やはり日本人特有の感覚を持っていないと理解できない部分が多いので、海外ではきっとヒットしないだろうなと。あくまでこれは日本人の日本人による日本人のためのゴジラ。だからこそ、私個人はすごく楽しめたし心に響いたし、是非多くの人に観てほしい、観てどう感じたか色んな人の感想を聞いてみたい、そう思う作品でした。
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