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カフェ・ド・フロールのkaitoのネタバレレビュー・内容・結末

カフェ・ド・フロール(2011年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

ヴァネッサ・パラディが主演しているほのぼのフランス映画かと勝手に思っていたら、不穏なオープニングでギョッとする。特に後でも登場するダウン症の子供たちが歩いてくる空港のタイトルシーンのオープニングが怖い。
69年のパリと現代のモントリオールが舞台で、何の話かよく分からないまま過去と現在を行ったり来たりしながら、少しずつそれぞれの関係性が分かってくるという構成がなんとも不思議。2つの世界にレコードや音楽という共通性があるのも印象的。

元嫁とヴァネッサ・パラディが精神的に不安定になり始めてから、映像的に少しずつクロスオーバーしてくるあたりが、とてもスリリングで、けっこう怖かった。
ドアを閉めたら衛兵がガラスに一瞬映っていたり、音の演出とか、夢遊病シーンとか、ちょいちょい登場人物たちが過去パートと現代パートを行き来する一瞬のシーンがなかなか恐ろしく、アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥの『ビューティフル』みたいな印象。

どちらも依存のようにも見える運命の相手を奪われる話で、かつ心変わりする側はどちらも無邪気という、現実世界によくありそうな非常に小さな話だけど、その分好感を持って途中までは観ていた。
ただ、最終的に夢の話とか前世の話とかってなってしまうと一気に気持ちが離れてしまって、映画自体が矮小化してしまった印象。
結局、元嫁が主人公の話だと結論付けたけど、それがいろいろあったけどなんとなく元夫も許せて、不倫が肯定されて終わるという、フツーに納得いかない話でもあった。

飛行機の映像でスタートするが、その後も要所要所で少しずつ太陽に近づいていく飛行機が、物語が少しずつ核心に迫っていくようなメタファーにも感じられ、『潜水服は蝶の夢を見る』の氷山シーンの使い方を思い出したりした。

『この少年は幸せそうに見えなくても、それを自覚していません』
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