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スヌーピーのメリークリスマス/チャーリー・ブラウンのクリスマスのchunkymonkeyのレビュー・感想・評価

5.0
数あるクリスマス映画の中で最も重要な作品。テレビの前で家族が集まり毎年クリスマスの時期になるとCBSやABCで放送されてきたこの作品を鑑賞することは、ツリーの飾りつけ、プレゼント交換と並び、アメリカの家庭でずっと大事にされてきたクリスマスの伝統だと言われています。このレビューでは本作の特徴とツッコミどころ、なぜこの作品が重要なのか、そして昨年Appleによってもたらされたこの伝統の危機と今年の状況について記載します。

1965年の作品で洗練されているとは言い難いスヌーピーの粗いアニメーションに単純で安易なストーリー。アニメーションが適当過ぎて、劇のリハーサルで演奏・ダンスに励む姿は、完全におくすりキメてる御一行様です。で、キリストもびっくり仰天のツリーの変貌ぶりは、何度見ても「えっ?フフッ...」と笑ってしまう。一方でセリフは非常に哲学的で深みがある上に、全体を隈なく彩る音楽は本格的なジャズとなんともチグハグです。が、これが一つの作品として完璧に調和していて、ディズニーアニメでは決して出せない独特で至極の味わいを醸し出しています。

①共有体験
アメリカは多様性にあふれた国であり話す言葉も生活スタイルもバラバラ。子供の頃に家族とともにこの作品を観た思い出は、アメリカ人の誰もが持つ数少ない共有体験"shared experience" であるとされています。なのでこの作品の設定やセリフなどはあらゆる作品の元ネタになっています。

②うつ病
クリスマスは一般には楽しい時期ですが、チャーリー・ブラウンのようにクリスマスの時期にうつ状態になってしまう人も多くいます。この映画が素晴らしいのは、1965年の作品にも関わらずチャーリー・ブラウンがはっきりと自分は鬱だとオープンに話をして、セラピーを受けることです。うつ病になったときに、そのことを堂々と話していいし、治療も受けたらいい。この作品を子供の頃から毎年観る伝統には大きな意味があると思います。

③商業化したクリスマスの本当の意味
これがこの作品のテーマですが、50年以上経った今も変わらないどころかむしろ悪化していますよね... この作品の需要がなくなることはなさそうです。

2020年10月この作品の独占配信権をApple+が獲得し55年続いてきたテレビ放映がなくなることが発表されました。当然アメリカ中から猛反発が起こり、最終的にPBSが年1回はテレビ放送してもよいという契約となりましたが、この条件がいつまで続くかは不透明とのことです。今年の放送は、12月19日の19時30分(ET)の1回のみになります。

作品の人気と同様、サントラも非常に高い人気を誇っています。クリスマスアルバムってありとあらゆるミュージシャンが出してますが本当いいですよね。皆様のお気に入りの一枚はなんでしょうか?私のお勧めはDave BarnesのVery Merry Christmas (2010) かな。SpotifyやAmazon Music Unlimitedで聴けると思いますのでぜひ(youtubeに上がってるのは音源が違うのでご注意を)。

少し早いですが、メリー・クリスマス!!
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