ちろる

鬼のちろるのレビュー・感想・評価

(1972年製作の映画)
4.1
「今昔物語」の中の「猟師の母鬼になりて子を噉はむと擬するものがたり」から着想を得て作られた人形劇。
寝たきりの母親を置いて、夜に狩りに出た猟師の兄弟だが、得体の知れない何かが兄の髪の毛を引っ張ってきた。
弟が慌てて矢を放つと何者かが消え去り掴んだシワシワの腕が髪の毛を掴んだまま残っている。
この腕は・・・・

とにかく、とにかく人形に宿る気迫がすごい!
漆黒の背景に白く浮かび上がるのは2人の兄弟と、鬼となった老婆。
人は、歳を取りすぎると我が子も食わんとする鬼と化すと元になった今昔物語の一説には書いてある。
身体も衰え、ご飯も喉を通らなくなり、我が子さえも認識出来なくなる老いへの私たちの言い知れぬ不安を恐ろしく体現するようなこの作品。
様式美の中で描かれた恐ろしき古典ホラーである。
闇夜の森を表現するために敢えて漆蒔絵の背景を作り上げたこともこの作品に重厚感を与え、50年近く経っている作品であることをを感じさせないインパクトがこの作品には詰まってます。
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