dm10forever

詩人の生涯のdm10foreverのレビュー・感想・評価

詩人の生涯(1974年製作の映画)
4.2
【静をもって動を表す】

敬愛する人形作家の川本喜八郎氏がアニメーションを担当した作品。
題材は安部公房の同名小説「詩人の生涯」。

個人的には「人形劇三国志」に代表されるように、川本喜八郎=人形劇というイメージが強かっただけに、アニメーション作品は新鮮な感覚の作品でもあった。

安部公房の小説を元に描いているだけに、作品自体が純文学的であり、随所に抽象的な表現を含むため雰囲気だけで捉えようとしても全く頭に入ってこない。
かくいう僕も2回連続で観てしまった。

全編を通して流れる「狭く」「寒く」「陰鬱」な世界観の中で、幻想的な言葉とは裏腹に極貧に喘ぐ末端の労働者たちの「夢」「願い」・・・
昇華されないさまざまな想いはどこを彷徨うのか。

特に川本喜八郎作品の魅力でもある「静をもって動を表す」という表現がピタリとはまる作品。

物語の世界観を決して損なうことのない素朴なデッサン画のような絵は、どこか無機質な感じがするくらいに寒々しい。しかし、同時に力強くも感じるそのタッチからは、明日をも知れない労働者たちの「それでも生きる」というギリギリの中にあってそれでもなお消えようとはしない生命力を表しているようにも思える。


たった19分の作品で、久しぶりに感性を刺激されたようなビビっとくる感覚。
逆に言えば「よく19分でまとめたもんだ」と。
うまく言葉に出来ないのが悔しくもあり・・・。続きはネタばれコメ欄に残します。
dm10forever

dm10forever