やまもと

ディオールと私のやまもとのレビュー・感想・評価

ディオールと私(2014年製作の映画)
3.7
ファッションブランドのドキュメンタリームービー大好きです…

夢のように美しいショーの裏側は、締切とクオリティのジレンマとか、利益と独創性の両立とか、コミュニケーションの行き違いとか、どこにでもある苦労がてんこ盛りだけど、それさえも楽しんでいるようで、文句を浮かべながらも次々にデザイン画から浮かび上がるドレスの美しさたるや、魔法のようだった。

メゾンを支えるのはセンスを備えたデザイナーだけではなくて、有能なスタッフに一流の職人達に、顧客の存在。伝統の維持には金がかかることをメゾンで働く彼らはよく知っていて、白衣の胸の「Dior」の刺繍は誇り高くて光って見えた。

とはいえショーの評価はデザイナーの評価に直結している。創作は途方もないほどに終わりがなくて、選択の連続に考えるだけでフラフラしそうだ。私がスクロールして見たあのドレス1着の裏に、一体いくつの試作とボツ案があったのだろう。
可能性はあらゆる悩みの種となり、選ばなかった選択肢を思い返してはプレッシャーが積み重なる。ショーの直前に涙を流すラフ・シモンズに、「Diorのデザイナーに就く人間でさえ緊張するのか」と驚きつつも、そもそも一流メゾンの顔になることのプレッシャーなんて想像さえできないほどに強烈だ。

アトリエは「ここから何かが生まれていく」というようなエネルギーを感じた。創業者クリスチャン・ディオールが語りかけるような演出は、映画に重心を生み出していてよかった。
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