アベベチゴベナ

母と暮せばのアベベチゴベナのネタバレレビュー・内容・結末

母と暮せば(2015年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます


山田洋次作品は「たそがれ清兵衛」と「隠し剣鬼の爪」と「小さいおうち」を見た程度で弱者です。とくに何も考えないで劇場に足を運びました。結果、キテるな。って感じでした。

まずは、最初の原爆投下のシーン。本来ならば[地獄]をワンシーンでも写すはずですが、ビカビカッと[死の光]に包まれるインクのみで[地獄]を表現するという簡潔な演出で、いいなーって思いました。

あとは、主演の吉永小百合が映画を支配し続けます。二宮くんがペラペラ喋るシーンの軽さもすごく良かったし、黒木華さんの芯の強いところと弱いところが見え隠れするところも良かった。加藤健一さんも子役も全て良かった…子役良すぎた…それでも、吉永小百合さんが柱となって映画全体のトーンを決めていたと思います。ニノに泣きつくサユリ、口説かれて頬を赤くするサユリ、サユリの長回しばかりなのに画面が持つ、スゲー!上海のおじちゃんとの絡み最高だったなぁ。

でも、ニノの幽霊っぽさがちょっと嫌な感じがしました。ホラー演出が怖いよ!最近、「岸辺の旅」を見たせいか物足りなさを覚えましたが、比べるものではないのかなぁと思います。

まぁ、そんなことどうでもよくて、今まで書いてきたことを全て吹き飛ばすラストが待っています。ぶっ飛ばされました。ネタバレして書きますが、キリスト教的な天国に導かれるニノとサユリ。それはいいんですが、それを見送る人の数がめちゃめちゃ多い。そして合唱、手を上げて振る。衝撃です。

そして、あの人々は長崎の原爆で亡くなった人たちの亡霊なのかと考えました。背景も光ですし、原爆のシーンでも光に包まれていたから、そんな風にビビッときました。大勢の犠牲者を見てると色々な思考が頭の中を駆け巡りました。あの人たちはいつまであそこで天国に行かず死者を見送るのだろう、後々、供養される人もいるかもしれないけど、忘れられてしまった人(そういう人もいるかもっていう話はサユリがしてた。)は永遠にあそこに居続けるのだろうか、とか、とか、とか、考えてるうちにドヨンとした気持ちが腹の中に溜まりました。重い。「悲しいけど、戦争なのよね〜」ってセリフをウッディ大尉が言ってたけれど、戦争って不条理だなぁと痛感しました。

個人的にはデートで行きましたが大事故。俺のこの魂は誰が供養してくれるの?山田洋次よ