上海十月

母と暮せばの上海十月のレビュー・感想・評価

母と暮せば(2015年製作の映画)
2.4
「父と暮らせば」の対になる作品。前者は、広島で今回は、長崎。山田洋次も84歳となり伝えておかなければの気持ちで今作に臨んだと思います。音楽も脱原発の坂本龍一で伝える意思を示してますね。当然、吉永小百合も原爆の朗読したりと反原子力、原爆では筋金入り。「父と暮らせば」でも思ったんですが原作が戯曲なんでどうしても会話劇のようになって映画的な面白さは今回も見られなかった。嵐の二宮さんは、頑張っていたと思います。でもこれほどまで説明的な話をしなければならないのかと・・・前作の「小さいおうち」は、説明的な部分はありましたが、映像的な表現でスリリングな話で80過ぎても山田洋次は、若いなと思いました。しかし今回は、ラストを観ながら、監督も黒沢監督のようにある種の感慨に達したのだと思いました。この作品は、山田洋次の遺書にもみえる作品です。脚本の師匠である橋本忍「複眼の映像」にも書かれているような、黒沢の遺書「夢」ように見えます。長男が家に亡霊で戻るシーンが「夢」の中のトンネルのエピソードにそっくりだったので驚きました。次男が映画監督になりたかったことで伊丹万作、小津安二郎に手紙を書いたエピソード。ポスターが貼られているのは、「淑女は何をわすれたのか」(小津監督作品)戦後の「ヘンリー5世」、「アメリカ交響楽」の話をするところは、山田監督の映画体験なんだろうと感慨深い。でも映画は、映像で語らなければ、響かない。今回は、ファンタジーということVFXも多用して、あらたな挑戦ともいえるのですが、「男はつらいよ」でたまに出る寅さんが小舟で寝てたら木場のほうまで流されてそこで豆腐屋の手伝いするという演出はできないかなぁと個人的に思いました。すでに次回作「家族はつらいよ」で喜劇をやるそうで期待したいですね。
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