MasaichiYaguchi

振り子のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

振り子(2014年製作の映画)
3.3
お笑い芸人・鉄拳さんのパラパラ漫画を実写映画化した本作からは、時代背景になっている昭和へのノスタルジーが感じられる。
1970年代後半から21世紀を迎えた2000年代の初めまでの主人公たち、大介とサキの歩みは、そっくりそのまま私たちの世代に重なる。
だから作品に登場する様々なもの、世相や出来事を主人公たちと一緒にリアルタイムで経験してきたので、恰も時計の針を逆回ししたような感慨を抱く。
そして本作の登場人物たち、大介やサキ、彼らを見守る周囲の人々、八百屋の橋本おじさん、サキの両親等、如何にも昭和の香りがする。
ストーリー自体も昭和の下町人情劇というか、当時のテレビのメロドラマといった感じだ。
私ら世代にとって、これらのキャラクターたちが繰り広げる世界は郷愁を呼び起こすが、今時の人々には古めかしいドラマに映るかもしれない。
特に社会的に駄目亭主である大介に甲斐甲斐しく仕えるサキの姿に、若い女性はどのような感想を持つだろうか。
地味で小品な映画だが、意外な有名人や俳優がちょい役で出演しているので、それに気付く楽しみもある。
本作で描かれる「後悔先に立たず」ではないが、やり直したくてもタイムマシンでもないと時を遡ることは出来ない。
来し方行く末に思いを馳せ、振り子が刻む時間の流れの中で一分一秒、精一杯生きることの素晴らしさがこの夫婦から伝わって来る。