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トランスフォーマー/最後の騎士王のよーだ育休中のレビュー・感想・評価

3.5
オートボットの総司令官オプティマス・プライムが《創造主》を探すために宇宙へと旅立った後、人類とトランスフォーマーの戦いは激化した。トランスフォーマーは違法な存在とみなされ、新たに《準軍事組織TRF》が組織された。発明家Cade Yeager(Mark Wahlberg)はオートボットらを匿っていたが、悪の首領メガトロンが生き延びていた事が発覚する。


◆ A thousand years, we've kept it hidden. 

Michael Bey監督による大人気SFアクションシリーズの第五作目。今作において、トランスフォーマーと人類との新たな歴史が明かされました。中世のブリテン暗黒時代。アーサー王の治世。かの有名なキングメイカーであるマーリンの魔術は、トランスフォーマーたちの先進的な科学技術であったという設定です。

魔術師マーリンは酒飲みのホラ吹きというどうしようも無い男だった点に加え、前作『ロストエイジ』で神経質なワンマン経営者を怪演したStanley Tucciがキャスティングされていたのがシュールでした。

このマーリンや円卓の騎士たちの子孫が《ウィトウィック騎士団》を結成。トランスフォーマーの秘密の守り手として歴史の裏舞台で活動をしていたようです。ガリレオやダ・ヴィンチ、リンカーンなど錚々たる歴史上の偉人たちが名を連ねる秘密結社とは、まるでフリーメイソンのようでした。

『ダークサイトムーン』で米ソ宇宙開発競争の裏側にディセプティコンが潜んでいた事は明かされましたが、今作ではさらに30年ほど前にオートボットと人間との間に関わりがあったと明かされています。バンブルビーは第二次世界大戦に連合国側として参戦し、ヒトラーを暗殺したのも時計型の小型オートボットであったと語られています。


◆ Now, to save our future, we must unlock the past

今作では《マーリンの杖》がマクガフィンとして重要な役割を果たします。トランスフォーマーの《創造主クインテッサ》から離反した十二騎士が地球に隠したもので、メガトロンらディセプティコン、クインテッサに洗脳されたオプティマス、ウィトウィック騎士団一派(Cadeとオートボットたちを含む)らが三竦みとなってこれを奪い合います。

シリーズ作品の世界観が大きく醸成されたものと感じましたが、だからこそ従来の作品以上に説明臭い部分が多いと感じました。起承転結が曖昧で、説明とアクションを交互に挟む展開は、肯定的に捉えれば「テンポが良い」ですが、過去のシリーズ作品と同様に尺は長めであるため「冗長である」ようにも感じられます。アクションやコメディのパートについても、いつものM.Bay節が効いた「カッコイイだろ?」「面白いだろ?」の全面押しでした。

今作のヒロインVivian(Laura Haddock)がウィトウィック騎士団の《最後の生き残り》という事実を提示した後に、シリーズ前半三作品の主人公Sam Witwicky(Shia LaBeouf)の写真を大々的に写す演出は説明臭くないのにわかりやすくショッキングでした。これくらいの匙加減が良い。


◆ Sting like a bee.

ラストは洗脳されていたオプティマス・プライムが正気に戻り、人間とオートボットが協力して敵を打倒。地球滅亡の危機を救うという予定調和のエンディング。次回作への伏線となるような含みを持たせた匂わせ演出までありました。

︎︎︎︎︎︎☑︎︎︎︎︎︎︎ メガトロンとオプティマス・プライムが実は兄弟だった
︎︎︎︎︎︎☑︎︎︎︎︎︎︎ 地球は超巨大トランスフォーマー『ユニクロン』だった
︎︎︎︎︎︎☑︎︎︎︎︎︎︎ 創造主クインテッサが地上の雑踏に紛れ生き延びている

しかしながら、本シリーズの監督M.Bayはこれにて降板となります。続編にあたる『バンブルビー』『ビースト覚醒』は登場するキャラクターこそ同じであるものの、M.Bay版トランスフォーマーの世界とは異なる歴史、設定で展開されていました。

トランスフォーマーのキャラクター造形や基本骨子はSF作品として魅力的なものではあるのですが、そろそろ同監督の「いつものやり口」に胃もたれがしてきている所だったので、新しい風を吹き込むのは正解だったのではないかと思われます。