KARIN

恋人たちのKARINのレビュー・感想・評価

恋人たち(2015年製作の映画)
4.1
衝撃のクライマックスがあるわけでもない。
派手な演出、演技があるわけでもない。
それなのに、観た後にしばらく動けなくなる…そんな不思議な力を持った作品。

物語の登場人物たちはみな何かに苦しんでいる。何かに囚われて生きている。
そして何らかのきっかけで心がちょっとだけ変わる、感動的な曲が流れ始める。

だけど、それだけ。曲の後の無音が教えてくれるように、物事はそのまま、現実は何も変わらないままである。

心が変わったからって、すぐになりたい自分になれるわけでも、誤解が解けるわけでもない。凄腕弁護士が手を差し伸べ、裁判を勝たせてくれるわけでもない。

だけど「何か」は確実に変わるんだ。残酷な現実は変わらなくたって、心がちょっとでも前に向けば、前を向く決心がつけば。そしたら人生は、幾分か素敵なものになる。

そんな心の絶妙な感覚を、映像に、物語に染み込ませて伝えてくれた、なんとも珍しい映画でした。
KARIN

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