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恋人たちのwigglingのレビュー・感想・評価

恋人たち(2015年製作の映画)
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ただただリアル。今の社会状況をそのまま映し出す鏡のような映画。
傑作『ぐるりのこと。』から7年、橋口亮輔監督の新作は、息苦しさが加速する世の中で、深い絶望の中から微かな希望を見出す人々を描いた群像劇です。

それまで他人事と気にも留めなかった事や、日常に追い立てられ向き合えなかった事、まさに今わが身に起きているような事が、圧倒的な現実感をもって突きつけられる。ある程度歳をとっていれば、本作に描かれるエピソードの一つや二つは身の回りに転がっているんじゃないかな。
だから観てるあいだずーっと辛くて苦しい。だけど一瞬たりとも目を離す事ができないんだよね。これぞ橋口マジック。

本作で特筆すべき事は、メインキャストの3人が演技経験ゼロまたはそれに近い方だという事。もともとワークショップとして企画されていた作品が劇場公開作になったという経緯故だそうで。
これが素人と思えない素晴らしい演技なんですよ。なんという生々しさ。
ふつうの俳優が演じるベタさが微塵もないし、見慣れない演者である事がこの圧倒的なリアルさにもつながっているんだろうなと。ベテラン俳優をあえて脇役にしたのは大正解。

この容赦ない世界とどう折り合いを付けていくのか、これからずっと問い続けられる事になることでしょう。そんな時に思い出すのがきっと本作なんだろうなと思いました。
今年観るべき映画の一つです。必ず観てください。
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