すずきひろし

恋人たちのすずきひろしのレビュー・感想・評価

恋人たち(2015年製作の映画)
3.3
「ハッシュ!」は、大好きな映画なのですが、本作には全くノレませんでした。橋口監督は、登場人物達を肯定したいのか突き放したいのか、好きなのか嫌いなのか、正直良く分かりませんでした。無論、橋口演出によって、個々の役者さんの演技が傑出しているのは確かで、それだけでも本作を観る価値はあるのですが、キャラ造型自体は非常に類型的で、そのアンバランスが個人的には最後まで気になりました。

橋口亮輔は、等身大の生きづらさを描くなら、自身の当事者性に即した人物を描いた方が良いだろうし、自身の当事者性とは全く異なる人物像を構築したいなら、突出した演出力だけに頼るのでは無く、もう少し、類型的では無い人物像を描くべきではないか、と思ってしまいました。

言い換えると、橋口亮輔は、演者達の身体性、佇まいは、こよなく愛しているにも関わらず、演者達が演じる役柄自体には、全く関心が無いように見えてしまう、という事なんですよね。それが、個人的に居心地が悪いというか。

もしかすると、橋口亮輔は、愚かな凡人達の俗物性を肯定する映画を作ろうとして、でも彼自身、そんな人達を肯定できていないのかもしれない、そんな風にも感じました。

ただ、そういう作家としての距離感の危うさも込みで、好きか嫌いか、と言われれば、やはり、橋口亮輔は、大好きな演出家、なんですよね。成嶋瞳子の存在感は凄いと思いました。

橋口亮輔のファンは、彼にナイーブなままであり続けて欲しいのかもしれないけど、個人的には、彼には徹底したコメディ映画、みたいなのを撮って欲しいと思います。