井出

恋人たちの井出のネタバレレビュー・内容・結末

恋人たち(2015年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

この映画では普段聴かない人の声を聴くことができる。ブツブツ言いながら歩いてる人、疲れて弛みきった頬に、化粧もしない主婦、同性愛というマイノリティとなって社会に恨みをもちつつも気持ちを抑えて弁護士にまでなった男。社会では排除され、無視される人々の声を聴くことができる。
確かに彼らは人間臭すぎて、醜く映る。中には彼らと自分は違うと思い込んで、不愉快になるものもいるだろう。でも、彼らの声を聞いたとき、果たして彼らと自分は違うと言い切れるだろうか、もし同じ経験をしたら自分も…と。
この映画は淡々と彼らを写す。静かに、役者の挙動全てを。普段は直視できないだろう、癖や、心から溢れて今、言葉に成り立ての気持ちを。
だからこそ、カメラが動くとき、ズームアップするとき、語りは強調され、より目が離せなくなる。照明も基本暗いから、光が差し込むとより、明るくて暖かい気持ちになる。
一番面白かったのは、恋人の立ちションを見る彼女。監督はこれは愛だと言う。知らない人に一緒にテレビを見ようということも、愛。腕がない理由をさらっと言えるのも愛。そっけない夫が気分で嫁を褒めるのも愛。お茶を注いであげるのも愛。自分とは比べ物にならないくらい苦しんでいないのに、その話を共感的に聴くのも愛。醜いそういう一つ一つがあれば、こんな窮屈で今にも壊れそうな人間関係のなかで、なんやかんや共存して生きて行けんだな〜。
この映画を見る私たち観客も、彼らの醜い姿、つまり立ちションを見ているんだよと、言われているような気がして、嬉しかった。
これほど人間愛に溢れた映画ってまれなんじゃないかな。

そういえば乳出てたけどPG-12なのも笑える。とにかく役者は、体当たりで、本気で、演じていたから、エロさというより、芸術と判断したということかな。
井出

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