肉鹿

恋人たちの肉鹿のレビュー・感想・評価

恋人たち(2015年製作の映画)
4.4
愛おしい3人の「恋人たち」の物語———橋口亮輔監督作品。

「がんばって生きてるね。偉いよ」と呟いてしまうぐらい、まるで当て書きされたかのような主人公たちの存在感が圧倒的で涙が溢れてしまう。

特に篠原篤さん!
顔面の悲壮感が天才!瞳の哀しさが脳裏にこびりつくほど鮮烈!
放置しすぎて土のようになったカレーをパンに直塗りたくって食べる匂い立つような生活臭のする演出も最高!
1度だけ素人かのように不器用なまでにクローズアップするカメラ演出も心憎い!

さらに成嶋瞳子さん!
かなり体を張った演技をしてて圧倒されるけど、家での癒しが雅子さま成婚パレードをパート仲間と見物に行ったビデオを見るしかないていう脚本がやっぱり天才的!
自分の結婚式では決してないのが辛くて切なくて泣いちゃうし、こちらも生活臭がプンプン。
生活のディテールの細かさからストレスが朦々と匂い立ってくるようだし、テーブルの拭き方もやばい。ごみを手で取ってから拭くなんて生々しすぎ…

2人に比べると影は薄いけど池田良さんもこの人しかいないというぴったりさで、張り付いたような薄っぺらい笑顔が素敵!

そもそもタイトルが「恋人たち」ていうのが最高です!
この恋人たちの意味は作中の人間関係だけではなく、観ているうちにまるで主人公たちのことを恋人かのように愛おしくなってきてしまうわたしたちにも向けられてるんだと思う。

映画と観客の距離感を「恋人たち」と断言してくれてるかのような優しさに満ち溢れていて大好き!
肉鹿

肉鹿