義民伝兵衛と蝉時雨

ユリシーズの義民伝兵衛と蝉時雨のレビュー・感想・評価

ユリシーズ(1954年製作の映画)
3.7
ホメロス「オデュッセイア」の映画化。パイエケス人との交歓から、キュプロクス物語、セイレンの誘惑、キルケの物語、さらには冥府の物語、そして求婚者誅殺が、細部に相違はあれど原作の中枢を成すものが見事に抉り出されて映画化されている。「オデュッセイア」の誇る冒険談的はたまた御伽話的な娯楽性が違和感の無い映像世界観で表現されていて興奮した。取り分けキュプロクス物語のシークエンスはポリュペモスの造形や洞窟のセットから物語の表現の仕方まで目を見張るものがあった。カーク・ダグラスの演じるオデュッセウスにも違和感は無い。マンガーノ嬢のペネロペイアも予想通りやはり素晴らしく、本作の十数年後に「アポロンの地獄」でイオカステを演じたことを思うと感慨深いものもある。
先日鑑賞したハリウッド超大作「トロイ」とは違い、作り手のホメロス愛が感じられる内容に興奮した。