きゃんちょめ

ユリシーズのきゃんちょめのレビュー・感想・評価

ユリシーズ(1954年製作の映画)
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【イリアスとオデュッセイアの基礎知識】


【ホメロス問題】
フリードリヒ・アウグスト・ヴォルフが提起したのが「ホメロス問題」である。「素晴らし過ぎる『イリアス』の15693行全24巻とか『オデュッセイア』の12110行全24巻もあるような作品、しかも全て6脚韻(=ヘクサメトロス)で統一されているようなものが、ひとりの盲目の詩人によって作られたなんてことが本当にあるだろうか。」という問題である。

【『イリアス』の主題は「怒り」】
英語の「エピック」が叙事詩という意味でこの単語の語源はギリシア語の「エポス」である。『イリアス』の重要な主題は冒頭にそう書かれている通り「怒りを歌え」である。誰の怒りかというと、英雄アキレウスの怒りなのである。なぜアキレウスは怒っているのか。それは、自分が戦って勝ち取った戦利品を総大将のアガメムノン(スパルタ王メネラウスの兄)が勝手に横取りしたからである。トロイア戦争は、トロイア方(がた)とアカイア方(がた)の戦争である。しかし、神であるゼウスはとっくにトロイア方の勝利をあらかじめ決めている。むしろこの戦争を屈折させているのは、アカイア方の英雄アキレウスが、同じアカイア方の総大将アガメムノンに怒りをぶつけていることなのである。このアキレウスのアガメムノンに対する怒りによる内輪揉めによって、トロイア方が巻き返すということが起きるのである。例えばアキレウスの戦友パトロクロスが討死するのである。

【韻文と翻訳の周辺事情を抑えておこう】
『イリアス』も『オデュッセイア』も「ヘクサメトロス(=6脚韻)」という詩でできている。ちなみにアイヌ民族の「ユーカラ」も韻文である。ずっと暗唱されていたホメロスの詩を最初に書き残したのは紀元前6世紀後半のアテナイの独裁者のペイシストラトスであったとされている。また、ホメロスという詩人は盲目だったと言われている。ホメロスの後に詩を暗記して歌っていた人々のことを「ホメリダイ」という。『イリアス』も『オデュッセイア』も「長短短長短短(例えば、冒頭の「メーニン・アエイデ・テアー」など)」という6つの脚韻の連続で続いていく。翻訳で言えば、呉茂一(くれしげいち)の擬古文訳は日本文学史上の大達成である。さらに土井晩翠(どいばんすい)は全てを7・5調で訳したのであるがこれも凄まじい。制作の年代は紀元前8世紀の中ごろとされるホメロスの『イリアス』と『オッデュセイア』の中には、古代ギリシャ三大悲劇詩人の一人であるソポクレスが、紀元前427年ごろにこれから戯曲を書くことになる男オイディプスについて、少し言及されるシーンがある。しかし、そこを見ると、ソフォクレスはかなり元々のギリシア神話の設定をかなりダークに改変していることがわかる。

【『イリアス』はどういう話なのか】
『イリアス』は10年間続いた大戦争であるトロイ戦争の10年目の最後の50日間だけが全24巻で描かれている。今でいう大河ドラマのようなものである。ちなみに、有名なトロイアに巨大な木馬が入っていって、トロイアが陥落する有名な場面や、アキレウスが死ぬ場面というのは、実は『イリアス』の本文では描かれていない。

【『トロイ』という映画になっている】
『イリアス』は、ブラット・ピットとオーランド・ブルームとピーター・オトゥールが『トロイ』という映画にしている。主役のアキレウスはブラッド・ピットが演じている。アキレウスを殺す美男子パリスにオーランド・ブルームが扮していて、トロイア方のプリアモス王を演っているのがピーター・オトゥールである。

【時代設定】
詩人ホメロスが活躍したのはアルカイック期の少し前だが、『オデュッセイア』の舞台となるミケーネ時代はそれから500年も前の青銅器時代である。ウラノスの時代→革命→クロノスの時代→革命→ゼウスの時代という順番で権力が移行していき、人間が今生きているのはゼウスの時代だというのが基本的な世界観である。神と人間の間にいるのがヘーロース(ヒーロー)である。人間は死ぬのが当然で、神は死なないのが当然なのだが、英雄は神のような特殊能力があるけれども死ぬことにはなっている。だから、英雄アキレウスもヘレネも死ぬのである。アキレウスは母親が女神で父親が人間である。ヘレネは父親がゼウスで、母親が人間である。

【『イリアス』の前提】
『イリアス』は次のような話を前提している。海の女神テティスと人間ペレウスが結婚してアキレウスが生まれるのである。この結婚式に呼ばれなかった争いの女神エリスが、黄金のリンゴを「世界で最も美しい女神にどうぞ」と書いてこの結婚式に落としたことで、とんでもないことになる。ゼウスの妻ヘラと知恵の女神アテナと美の女神アフロディテがりんごは自分のものだとして争いを始めるのだ。誰のものかを決める役に選ばれたのが羊飼いでトロイの王子で美男子のパリスであった。パリスは世界で1番美しい女を自分の嫁にしてくれるというから、美の女神アフロディテを選ぶ。その世界で1番美しい女とはスパルタのメネラウス王の妃ヘレネであった。そしてパリスはヘレネを連れてトロイアに駆け落ちする。妻を取られたメネラウス王は怒って、自分の兄で全ギリシアで一番の権力者のアガメムノンに応援を要請してトロイアに攻め込む。それから、ヘレネをかつて奪い合った英雄たちがみんな集まってきてヘレネ奪還に協力するという展開になる。この軍勢がアカイア方(がた)である。このような設定になっているのが『イリアス』である。(そして、『オデュッセイア』はそのトロイア戦争の後日譚である。)

【とにかくこれだけは覚えておくべきキャラクター】
アカイア方に対するトロイア方にはヘクトルとその妻アンドロマケがいる。ヘクトルはアキレウスの仇敵で最後に決闘をする。トロイアは最後に陥落して、ヘクトルとアンドロマケの間の息子のアステュアクスは城の上から投げ落とされて死ぬ。また、ネストルは弁舌家で演説が非常にうまかったり、オデュッセウスには知恵があったりして、キャラクターにもそれぞれ個性がある。さらに、これだけは覚えるべきキャラクターだけをあげておくと、アカイア方はアガメムノンと弟のメネラオスを中心にアキレウスという史上最強の戦士と、ディオメデスという個性的な英雄がいる。そのほか、アイアス、オデュッセウス、ネストルがアカイア方(がた)にはいる。アカイア方はトロイア方に向かって攻めかかる。かたや攻められる側のトロイア方は、プリアモスという年老いた王様を中心にして、その王様の親族たちが「絶対に陥ちることはない」といわれている城を守っている。その王様の長男がヘクトルで、トロイアの存亡を背負っている。ヘクトルの妻がアンドロマケである。トロイアには全ギリシアから軍勢がやって来ているのだから、明らかに優勢はアカイア方なのである。それなのにトロイア方は10年間も城で持ちこたえたわけだ。『イリアス』の出発点はアキレウスの怒りで始まる。「なんでアガメムノンなんかのために戦わなければならないのか。」とへそを曲げてアキレウスは戦場に行くのを拒否し始める。しかしそうするとアカイア方はどんどん負けていく。アカイア方が負けるとアカイア方についた神々も困る。例えば美の女神アフロディテはトロイア方についている。ヘラとアテナはアカイア方についている。アキレウスは自分の怒りゆえに自分の仲間がどんどん死んでいく。その代表が親友のパトロクロスである。パトロクロスはアキレウスがへそを曲げているのでアキレウスの鎧を代わりにつけて戦場に出て、その結果ヘクトルに討たれてしまい、アキレウスの鎧も奪われてしまうのである。それでアキレウスはパトロクロスの敵討ちをするために戦場でヘクトールとの一騎討ちをするのである。だから、その時ヘクトールが着ているのはアキレウスの鎧なのである。つまり、アキレウスは自分の鎧を着た人と一騎討ちをすることになるというわけだ。第22巻でアキレウスとヘクトールはトロイアの城外で一騎討ちをする。当時の一騎討ちは槍投げであるが、槍が盾を突き破れなかったので太刀で戦うことになるのである。それでアキレウスは、ヘクトルを殺す。しかし、ヘクトルは死に際に、アキレウスがいずれパリスに殺される時の状況を詳細に予言するのである。よって、要するに、パトロクロスを殺したヘクトルをアキレウスが殺し、そのアキレウスをパリスが殺すのである。アキレウスはトロイアの陥落を見ずして途中で死ぬ。最後にトロイアを陥落させたのが、オデュッセウスの知略「トロイの木馬」であった。王プリアモスは死にヘクトルの妻アンドロマケは奴隷になる。これが『イリアス』である。

【『オデュッセイア』はどういう話なのか】
『イリアス』が「神に翻弄される人間の悲劇」だとすると、『オデュッセイア』は「知恵と文明の開拓の喜劇」である。『オデュッセイア』も全24巻である。前半12巻はオデュッセウスの冒険物語である。後半12巻はオデュッセウスが故郷に戻ってから裏切り者を全員殺すという復讐劇である。そもそも『オデュッセイア』は「トロイア戦争の後日譚」なのであるが、トロイア戦争の総大将アガメムノンは、帰宅した途端に、浮気しまくっていた妻クリュタイムネストラに殺されてしまう(← クリュタイムネストラは、ペネロペイアと対照的な妻なのである)。オデュッセウスは10年間続いたトロイア戦争が終わったので、トロイアから故郷イタケに帰ろうとしたら、海神ポセイドンを怒らせてしまって、またさらに10年間地中海を彷徨うことになるのである。オデュッセウスには故郷にはテレマコスという子供もいるのである。オデュッセウスは一つ目の怪物キュクロプスのところから抜け出し、魔法を使う女神キルケや、女神カリュプソのもとからも脱出し、冥界にも行くことになる。オデュッセウスは、死後の世界に行って、自分の死んだ部下や仲間たちにも会い、生き残るためのアドバイスも聞いているのである。オデュッセウスは頭がいいのでモテる。魔女キルケも、女神カリュプソも「ぜひあなたと一生過ごしたい」とか言ってくるし、パイエウケスの国に漂流した時には「王女ナウシカア(おそらく宮崎駿の「風の谷のナウシカ」における「ユパ様」はオデュッセウスがモデルではないだろうかと言われる)」に好意を寄せられる。また、オデュッセウスは好奇心旺盛でもある。サイレンの語源ともなったセイレンの呼び声は非常に魅惑的なのでみんなその声に夢中になって呼び寄せられてしまいそこで骨になってしまうのだが、オデュッセウスだってそれを耳栓して聞かなければいいのに、オデュッセウスは自分の部下全員には耳栓をさせたくせに、オデュッセウス自身は自分を船のマストにくくりつけて、自分だけセイレンの呼び声を堪能するのである。つまり、知的好奇心に満ち溢れているので、オデュッセウスは危険なセイレンの呼び声を自分だけ聞き、なおかつ生き残るのである。オデュッセウスはこのように、「知を探究し文明を切り開く男」という典型モデルとなった人物像を提供したキャラクターである。イタケに20年ぶりに戻ってきても、新しい苦難が始まる。『オデュッセイア』の後半の主題は「変身」である。後半でイタケという島に戻ってくると、イタケの人はみんな自分が死んだと思っている。だから、「自分が行方不明だった領主です。権力を再びください」などと言うと殺されるかもしれない。そこで、乞食のふりをしてオデュッセウスは自分の故郷に入るのである。オデュッセウスの父はラエルテスで、息子はテレマコスである。ペネロペイアは20年間夫を待ち続けていた。オデュッセウスの地位を乗っ取ろうとしている人々はイタケの領主オデュッセウスの妻ペネロペイアに求婚している。そしてオデュッセウスの財産を宴会によって食いつぶしているのだ。ペネロペイアは、求婚にYESということはできないし、NOというために必要な物理的戦力もないから、どちらとも言わず、結婚用の着物を織って時間稼ぎをするのである。つまり、「機織り(はたおり)」をしているのである。昼間は機織りをして夜にほどいていたのだ。ちなみにペネロペイアの女中たちはとっくに裏切って、ペネロペイアの求婚者たちと夜ごと寝床を共にしているのであるが、ペネロペイアだけは裏切ることがなかった。激怒しつつ、オデュッセウスは、忠実な元部下で豚飼いのエウマイオスなどを味方にしながら、屋敷に戻るのである。このように、屋敷に戻る道すがら、オデュッセウスは少しずつ信頼できる人だけに正体を明かして、味方を増やしていくのである。オデュッセウスが求婚者たちを全員一挙に殺した後でも、ペネロペイアは散々騙されてきた後だから、今まで乞食の姿だった人が実は夫のオデュッセウスだとは信じられない。そこで、「オリーブの木で作った二人のベッドを外に出して動かせ」と指示する。それを聞いたオデュッセウスは「生きたオリーブで作った二人の寝台を動かすなんて、そんなことはできない」と動揺してしまう。このように二人だけしか知らないはずのことを知っていたオデュッセウスを見て、初めてペネロペイアは信じるのである。つまり、カマをかけるのである。これでハッピーエンドかと思いきや、そうもいかない。ここにきてさらに、オデュッセウスが殺してしまった多くの若者たちの親族が復讐しようとしてやってくるのである。あわやまた戦争かと思われたところで、女神アテナが降りてきて和解が成立する。こうして、『オデュッセイア』は終わる。


【とりまオデュッセイア】
『2001年宇宙の旅』を見るにあたり『オデュッセイア』について最低限知っておくとマジで楽しかったのでまとめて書いておく。

【まずオデュッセイアって何】
『オデュッセイア』は、12000行以上の詩句で構成される古代の長編叙事詩である。紀元前8世紀にホメロスによって成立したらしい。もともとは口承で伝えられていたらしいが、どうやって文字になっていったのかについての詳しい経緯は不明。

【なぜか20世紀文学に影響を与えたのがオデュッセイア】
ホメロスの叙事詩『オデュッセイア』の影響を受けた作品はなぜか20世紀に多い。たとえば、アイルランドの小説家ジェイムズ・ジョイスの『ユリシーズ(1922)』や、ギリシアの詩人ニコス・カザンザキスの『オディシーア(1938)』とか、西インド諸島のセントルシアの詩人で劇作家のデレク・ウォルコットの叙事詩『オメロス(1990)』とか、カナダの作家マーガレット・アトウッドの『ペネロピアド(2005)』などがある。

【あらすじ】
トロイア戦争に参加するために故郷を離れたオデュッセウスが、海の神ポセイドンの妨害にもめげずに10年以上かけて彼の故郷の島であるイタカに帰ってくるまでの物語。故郷で待つ妻ペネロペのところに戻ってくると、オデュッセウスは妻に求婚していたものたちに軒並み復讐をする。

【故郷イタカ】
故郷のイタカではトロイア戦争終戦後、10年も経っているのに帰国しない領主のオデュッセウスは、もう死んだってことにされてオデュッセウスの妻ペネロペには求婚者がたくさん言い寄っていた。イタカでペネロペに求婚していた傍若無人な求婚者たちは全部で108人もいた。なぜその求婚者たちを王妃ペネロペは即座に追い返せないのかというと、その当時のギリシア世界の掟である「クセニア」のせいで、客人はかならず丁重にもてなさなければならないと考えられていたからである。

【オデュッセイアは二部構成】
『オデュッセイア』は主に二つの場面に分けられるとされる。前半のテーマは「遍歴」で、後半のテーマは「報復」とされることが多い。前半というのは第1歌から第12歌までのことで、そこではオデュッセウス一行の「漂白」が描かれる。基本的にオデュッセウス一行は海上をさまよっている。前半で仲間が死んでいく。後半というのは第13歌から第24歌までで、そこでは「復讐」が描かれる。

【風の谷ではないほうのナウシカアが出てくるのは第6歌】
漂着したオデュッセウスを救う聡明な王女の名前がナウシカアである。

【女神キルケーは第10歌に出てくる】
女神キルケーの魔法で、オデュッセウスの仲間たちは豚に変えられてしまう。

【冥界で母親と再会するのは第11歌】
冥界で母親と再開するシーンがある。

【牛を食べてしまうのは第12歌に出てくる】
太陽神エーリオス・ヒュペリオンの島の牛をオデュッセウスの仲間たちは食べてしまう。

【セイレーンは第12歌に出てくる】
第12歌に出てくる美声の怪物セイレーンはサイレンの語源。

【アキレウスとオデュッセウスの対比】
『イリアス』の舞台は小アジアのトロイアで、『イリアス』の主人公はアキレウスである。アキレウスは身体がとても頑強な人物。それに対して、オデュッセウスは色々と悩みが深いが頭がよい人物として描かれている。頭の回転が速くて「機略縦横なる(=ポリュトロポスな)人」がオデュッセウス。アキレウスはいわゆる力の英雄。オデュッセウスはいわゆる智の英雄である。

【トロイアの木馬の計】
そもそもトロイア戦争を決着させ、まさにそれによってトロイア軍をギリシア軍がついに倒した有名な「木馬の計」を考えだしたのがオデュッセウスである。

【テーバイってどこ】
アテーナイの約70キロメートル北にある古い都がテーバイである。

【クセニア】
『オデュッセイア』を読むときは、ギリシアの慣習「クセニア」が色々な場面で前提されていることがポイント。古代では人々は、基本的にどんな人が訪ねてこようとも、その相手を客としてその家の主人は丁重にもてなさなければならず、どんな人でも丁寧に泊めてあげてご飯を食べさせてあげて接待をしなければゼウス神の怒りが下されると考えられていた。ゼウス神が庇護する掟であるクセニアはかならず遵守しなければならないのだ。

【トロイア戦争の原因もクセニア】
トロイア戦争の遠因のひとつも、このクセニアである。トロイアの王子パリスが、スパルタを訪れたときに、スパルタの王がクセニアを遵守してあげたにもかかわらず、パリスは王を裏切って、スパルタ王妃のヘレネーを奪ってトロイアに連れ帰ったのだ。スパルタ王は王妃ヘレネーを奪い返すために英雄を各地から募ってトロイア攻略に向かったのである。こうしてトロイア戦争は始まる。

【息子のテーレマコス】
オデュッセウスの息子の名前はテーレマコス。テーレマコスは、クセニアの掟によって、108人の求婚者たちを丁重にもてなさなければならないことによってオデュッセウスの一家の財産がどんどん減っていくのを気にしている。

【ウーティスの計】
12名の仲間とともにキュクロープス族(=ひとつめの巨人族)のポリュペーモスを倒すときにオデュッセウスが機略を効かせて作ったのが「ウーティス(=nobody)の計」である。オデュッセウスが、あらかじめ自分の名前を「ウーティス」と名乗っておけば、「俺を殺そうとしているのはウーティスだ!助けてくれ!」と敵の巨人が助けを呼んでも誰も助けにこないというのが、この策略の内容である。ちなみにここで巨人族のポリュペーモスはオデュッセウスの仲間たちを、結果的に4人食べて殺している。

【機織りの計】
妻のペネロペも、夫と同じくとても智略に優れていたという設定。ペネロペの「機織りの計」が非常に有名である。姑の弔いの衣装を昼の間は織っているとペネロペは言い張り、夜の間はその糸をほどいていて、3年間もの間求婚者たちを騙していた。なぜこの策略がバレたのかというと、ペネロペの侍女のひとりがペネロペを裏切って求婚者たちにこの策略を暴露してしまったから。

【弓競技】
第21歌で、妻ペネロペがオデュッセウス所有の弓をつかって12本並べた戦斧の穴を射抜く競技をして、勝った人と自分が結構すると提案する。

【女神アテーナー】
女神アテーナーの援助によって乞食の姿に変えてもらったオデュッセウスは女神アテーナーによって最終的に元の姿にもどる。

【逆風が詰め込まれた袋】
第10歌で、風の神の島を出るときに、オデュッセウスの一行は「逆風が詰め込まれた袋」という謎の袋をもらう。その袋を部下が中に財宝が入っているんだと思いこんで開けてみたところ、故郷の島イタカが目の前にもう見えていたのにもかかわらず、その袋の中からは暴風が吹き出してきて、船は風の神の島まで吹き飛ばされてしまう。

【召使いで豚飼いのエウマイオス】
ずっと父親不在で育った息子のテーレマコスは、オデュッセウスの召使いに過ぎないはずの豚飼いのエウマイオスを父親同然に思って育ったため、乞食の姿に身をやつしていたオデュッセウスの目の前で、エウマイオスとテーレマコスは抱擁しあう。しかし復讐計画があるのでオデュッセウスは自分の素性を息子に明かせない、そういうシーンがある。

【女神カリプソの求婚を断る】
第5歌でカリプソの申し出をオデュッセウスは断る。もし求婚を受け入れて結婚していればオデュッセウスはなんと不死の神になれたのだが、オデュッセウスは不死の神になることよりも死すべき人間であることを選ぶ。しかもこのときオデュッセウスは女神よりも妻ペネロペを選ぶ。

【テーレマコスだけに素性を打ち明ける】
乞食の姿に身をやつしたオデュッセウスは息子テーレマコスにだけ自分の正体を明かし、求婚者たちへの復讐計画を親子で練ることにする。ヤギ飼いのメランテウスはオデュッセウスを完全に乞食だと思い込んでいるので、彼を蹴ったり罵倒したりする。求婚者のひとりアンティノースはオデュッセウスに足台を投げつけたりもする。妻ペネロペの女中たちもオデュッセウスを侮辱する。


【古代ギリシア演劇の構成】

古代ギリシアでは市民になれるのは男性だけなので、コルス隊は全員市民だから全員男性。(観客が男性限定だったという説もある。)

1.プロロゴス(序)
2.パロドス(歌いながらコルス隊が登場)
3.エペイソディオン(俳優たちの対話)
4.スタシモン(踊りながら歌う)
5.エクソドス(コルス隊が歌いながら退場)
きゃんちょめ

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