ゆりな

サーカスのゆりなのレビュー・感想・評価

サーカス(1928年製作の映画)
4.0
映画館での映画体験含めて、この点にさせてください。
サブスクにちょこちょこあるチャップリンですが、これはないんだよねぇ……!

コメディの最高峰とのことですが、ラストで泣いたのは、映画館で私だけですか?
昔の映画はエンドロールがなく「the end」でサクッと終わるため、パッと明るくなって涙が引っ込んだのも私だけですか?そうですか。

そもそもこのタイトル自体知らなかったのだけど、行きの電車で「チャップリンワールドでそういえば広々したサーカスエリアあった!!」と思い出しました。
写真見返しても、記憶でも、やっぱり綺麗!(笑)当時の古いサーカス場を再現するのは無理あるよね。

中身はコミカルで、あらすじにある「一世一代の綱渡り」は本当にラストのみ。
序盤の、警察に逃げる途中で、からくり人形の振りをするシーン、上手過ぎて笑ってしまった。

観客の年齢層もあり、コミカルなシーンでは笑いが起きていて、昔の映画館ってこんな感じだったんだろうなと思った。
席も満席でちょっとうるさくて、一体になって観る感じ。(最後には拍手が起きていた。)

もちろんCGもない1928年で、これどうやって撮ったん??が多すぎる。ライオンと隣り合わせも綱渡りも、本物の撮影だそうで。

あとはチャップリンが作曲し、冒頭では歌っている音楽が美しい!
チャップリンの映画の魅力は音楽にもあって、自作なんだからすごいよなぁ。映画館いっぱいにドラマチックな音楽を浴びれてよかった。

そして美しいラストシーンに涙。チャップリンの映画、どれもラストシーンが鮮明に浮かぶんだよね。それってすごいことじゃない?

以下ネタバレ


私調べで、これまで観たチャップリンの代表作だと、終わり方が2パターンある。

ひとつは「独裁者」「街の灯」のようにクライマックスの最高潮で終わるパターン。もうひとつは「モダン・タイムス」のように「新たな旅立ち」を描くパターン。

どちらにせよ現状回帰も現状を維持しつつ、よりハッピーなディズニー的な終わりがないんだよね。
「お姫様と王子様は末永く幸せに暮らしました。めでたしめでたし」は存在しない。

本作は、団長の娘と結ばれてハッピーエンド……かと思いきや、主人公が身を引き、恋敵と上手くいくようにアシストしてやる。
好きな人の好きな人を応援する主人公、最後で優しすぎだよ……。それまでの奮闘、どこいった?

そして3人で仲良く再出発に見せかけて、1人でサッと列車に乗らず残り、歩き出すラストシーンに感涙。
チャップリンがいつもインタビューで自身の最高作について「Next one(次作)」と語る強さはここにあると思った。

「人って何かを失っても強くいれるんだな」なんて陳腐な言葉でまとめたくはないけれど、「別れがあるから新たな旅が始まる」と背中を押されたのは確か。本作で教えてもらったそのことを、忘れずに生きたい。
本当に胸がいっぱいになりました。
ゆりな

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