ImariNozawa

知らない町のImariNozawaのレビュー・感想・評価

知らない町(2013年製作の映画)
4.5

ストーリー性でいうとやや複雑です。複雑で詩的。
理解しようとか、筋を追うつもりで始めは見ておりましたが、
ああこれは感覚でみなきゃだめなんだ、と思ってスイッチを切り替えたあたりから
ざらざらざらっと、音とか光とか空気とか温度とか湿度とか、そういう感覚がのべつ幕なし雪崩れ込んできた感じでした。

印象としては、滲むような映画。
点がパラパラとざっくばらんに打たれていって、
この点が線になるのかな、と思って見ていたら
その点がだんだん滲んで、混ざって、
キャンバスが滲みでいっぱいになった感じ。
たぶんこの滲みが蒸発して、乾いてきた時に、
初めて見える模様があるのだと思います。


常に上下に振れる画が、寝惚け眼の感覚に似ていて、
夢を見ているような錯覚がありました。
溶けるような冬の自然光が美しくてどきどきします。
とくに、後半からラストにかけて駆け抜けていくような画の展開が素敵。
一気に光と音の波に飲まれて、頭の中がぐるぐるします。
心臓をグッとつかまれて、鼓動のリズムを変えられてしまいそうな。そんな。
感性が揺さぶられるってこういうことかなあと思いました。自分に揺さぶられるほどの感性があるかどうかは別として。

わかりやすいエンターテイメント的映画と言ったら嘘になります。が、
最近自分に感覚や感性が欠けているな、鈍ってきたなと思う人にはぜひ見て欲しい。
たぶん理解するものじゃなくて、こころに残ってしまうものだから。
とにかく感覚的映画。

あ、あと、見に行くときはひとりがおすすめです。なんでかわかんないけど。
いろんな人に、ひとりで見て欲しい映画。
いっそ何人かで行って、バラバラの席に座ってみて、おわった後に一杯コーヒーを飲んでからおしゃべりしたい。

何か気になる点を一点だけ述べて、と言われたら、
ややことばが足りなかった気もします。
ことばというか、出演者の心の投げかわしというか。
ただ、視覚的に観客の心を揺さぶる分、それがないのがかえって淡白でよかったのかも。

映像と音の波に飲まれたい方はぜひ!
おすすめです〜。