Hotさんぴん茶

特捜部Q 檻の中の女のHotさんぴん茶のネタバレレビュー・内容・結末

特捜部Q 檻の中の女(2013年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

始まりはシリアスだが、アサドの登場から一気に面白そうになってきた。
アサドのキャラが良い。人間味があって。主人公カールとは正反対にみえる性格。それに特捜部より前はより退屈な単純作業の仕事だったという。そのことで、本人が張り切ってるのがまた良い!ついでに言うと、アサドがオススメする濃いコーヒー、どんなものか飲んでみたい。
また、宗教的なこと(アサドのお祈り)も描いてるのが丁寧に作られた作品と感じた。

事件の概要が始まると、ミステリアスで引き込まれる。

ちなみにここで出てくる被害者である政治家の女性、ブリッジというドラマにも出ていたので驚いた。そちらでは確か社会活動家みたいな役だった。思えば勝気な雰囲気の美人だったから、適役だったのだな。北欧の作品には、よく出ている女優さんなんだろうか。今まで北欧の作品をあまり見なかったので、新しい俳優を見られて新鮮だ。

自閉症または解離障害らしき被害者の弟役の男性、言葉少なだけど(というか無いけど)演技が上手い。こういうセリフのない演技、無表情の続く演技は返って難しいのではないか。

明かされていく事件の様相が、想像以上に変わっていた。加圧室に閉じ込められるなんて!監禁被害の様子が非常に生々しく、恐ろしかった。もともと閉所恐怖症気味の自分なので、尚更恐怖を感じた。閉じ込められて自由を奪われるって、この世の最低なことの1つだな。自分が今現在、こんな目には合っていないことのありがたみを感じた。

かなり猟奇的な事件だった。ここまでされる恨みなどこの女性に無さそうなのに、一体なぜ…?(と思いながら見てたけど、後で原因が分かった。運転中の人への目隠しは、おふざけでも子どもでも絶対ダメ!でも、なんで笑ってるんだろな、それをされた母親は…。ビシッと叱るべきところだと思ったけど。犯人はこの件では可哀想だった。とはいえ、仕返しの方法が人間じゃないレベルにひどいから、事件の件は同情できない。)

これら監禁の再現シーンは、正直見ているのが辛かった。これだけ見ていて辛くなる被害者の演技も、相当上手いと思う。

それにしてもかつての自動車事故の際に、車の横に現れた赤い少女は何者??と最初思った。しかし、後で理解した。この人はのちの被害者ミレーネなのか。あまりにも無傷すぎて、初めは幻想かと思った。と思ったら、少し後でやっぱり幻想かもとも思えた。こんな風に、現実と空想の区別がつかなくなる演出が凝っていた。

あとなんで事故直後のシーンがまるで、この女の子への犯人少年の一目惚れシーンみたいになってるのか?と不思議に感じた。それだけ、残酷でありつつも美しくみえるシーンだった。その点にも犯人心理というか、演出の意図を感じた。

ラストまさかの展開だった。
事件現場は、船の一部屋かと思ってたのに。
後で考えたら不自然だけど。
にしてもあんなところに5年もいたなんて…。ひどすぎて、被害者の気持ちを想像し切れない。表現できる言葉がない。

犯人は被害者女性を、死なせたくなかったのかな。死ぬよりひどい目に合わせるつもりだったのか?それとも?

なんだか犯人ラースって被害者ミレーネに対して愛憎混じってる気がするのは気のせい?こんなのが愛だったらヤバすぎだけど。

そう思うきっかけは、交通事故のシーンのミレーネがいやに美しく描写されていたから。
また実際事件発生時点では犯人の顔は見られていないし、見られたところで誰だかわからないし。そういう意味で少しでも恋仲になる必要はあったのかな?と思う。まあ異常犯罪心理なんて、理解できるはずもないけど。

また犯人の母は気づいてなかったの?もしかしてうっすら共犯なの?と思えた。それくらい不自然な犯罪現場。
でもここまで大掛かりではないものの、この点が被る監禁事件って実際日本にもあったなと思った。親が同居しておりながら起こった監禁事件。こういう家族の無関心って怖い。(この映画の場合、犯人母は認知症かもしれないけど)

最後、被害者の命は助かった。しかし彼女はあの特殊な装置から、いつかは出られるのか?と後味がなんとも言えない。また医療現場にこんな特殊な装置あるとは知らなかった。
なおそれに関連して犯人が作った装置を思うと、独学であの装置作れる犯人って異常に天才なんじゃ?と思えた。それかとんでもないエネルギーの持ち主か。この能力またはエネルギーを、別のところに発揮できたら良かったのに。

登場人物達のキャラ造りが自然で見やすく、また演出が凝っており。見応えのある映画だった。

◼️その他思ったことメモ:↓

・主人公カールの元に身を寄せた息子。描写が少ないだけなのかもしれんけどだいぶ父親に冷たいな…。彼女といて、父を外に追いやって放置とは…。(どうも義理の息子らしいけど、それにしても。)

・主人公に対する友人の言葉が泣ける。「誰よりも頑固だから最高のデカなのさ」という言葉。その友人は、主人公の判断に従った結果、寝たきり状態になったと言うのに…。だいぶ複雑な思いもあるだろうに、出てきたのはその言葉。なんとも言い難い重みを感じた言葉だった。

・ラースはなんで、本当のダニエル氏を殺した?真実がばれたから?この点あっさりと扱われたので、ちょっとわからなかった。