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フェルメールの謎 ~ティムの名画再現プロジェクト~のベイビーのレビュー・感想・評価

4.1
光を描いた画家、ヨハネス・フェルメールの謎を追ったドキュメンタリー映画。

最高に面白い!

どうしてフェルメールは、350年前の時代に写真に収めたような写実的な絵が描けたのか? その絵画史上最大の謎を解き明かそうとする、アメリカ在住の発明家ティム。彼はフェルメールがどうして写実的な絵を描けたのかを考え続け、一つの答えを導き出します。

飽くなき探究心と言うのか、男の浪漫と言うのか、フェルメールに取り憑かれた男は、視覚と脳の働き方の仕組みや、当時使われていたであろう絵の具の顔料のことも勉強しながら、自分の考えを立証しようと、自らフェルメールの絵を描くことにチャレンジします。その期間、1825日。途方も無い時間を費やします。

きっとこの映画を観たらフェルメールの見方も変わってしまいます。しかしそれは、"理解を超えた天才" から"理解できる天才"へと変わるだけ、彼の絵の美しさに、何一つ疑う余地はありません。

途中、ティムが自分の理論を立証するため、デイヴィッド・ホックニーという画家に助言もらいに行くのですが、その時ホックニーは、こんな言葉を残します。

絵画は "記録"だ、多くを語っている
筆使い、色彩、陰影。これら全てが情報なんだ
玄人目から見れば、絵画は文章のように読め
素人目でも、その絵の素晴らしいさは一目瞭然だと…

それと同じようなことを、今敏監督もおっしゃってました。作り手がこだわって伝えようとする意図。たとえそれが直接的に伝えられなかったとしても、それは作品の厚みとなって、なんらかの形で伝わるものだと。

絵画であれ、映画であれ、アニメであれ、作品の向こう側には作り手が居ます。その作り手の心に触れることは、大変大きな喜びです。

それを改めて気づかせてくれた作品。フェルメールという人物像を、グッと身近に引き寄せてくれた素晴らしい作品です。

本当、ティムが挑んだ1825日間に、脱帽と感謝です。
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