しゅん

ナタリー・グランジェ(女の館)のしゅんのレビュー・感想・評価

-
2019.7.25 アテネフランセ(英語字幕)
頭を抱えたりして不安げなルチア・ボゼーは飾りのついた黒のブラウスに黒のパンツで脚が長く、ジャンヌ・モローは涼しい表情で80分の間にタバコを五回吸った。二人の女と二人の女の子が暮らす「女の館」に現れるのは猫や小鳥たち。鼻が大きく顎の突き出たジェラール・ドパルデュー演じるセールスマンの男も、人間というより動物たちの中の一匹みたいだ。この映画の主役は建物とボート付きの湖(プール?)のある広い農園で、固定カメラで撮られた映像からは「いい建物でしょ?」という身も蓋もないメッセージが聞こえる。電話にしろ、ラジオのニュースにしろ、全ての外側が無化される世界。けれども、閉じこもった世界から感じられるのは安らぎや穏やかさではなく強烈な緊張感で、何も起こらない世界の終わりなき戦いの感触を観るものに伝える。後半の、家の窓から犬を散歩する老人を捉えた呑気なショットでさえ鋭い。
デュラスの映画は初めてだったけど、小説と同じような強度があることがよくわかった。
しゅん

しゅん