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はじまりへの旅のEditingTellUsのレビュー・感想・評価

はじまりへの旅(2016年製作の映画)
4.3
今日はマットロス監督の作品をご紹介!カンヌ国際映画祭で「ある視点」部門でも監督賞を獲得した作品なだけに、日本の映画の流行としては波に乗った作品ですね!

今回は、ストーリーテリングの奥に少し入って見ましょう!

毎回のごとく入っていますが、映画はキャラクターがメイン。キャラクターにどれだけ色を足せるのか、観客を惹きつけられるのかで映画の善し悪しが決まります。

さて今作。あなたはどのキャラクターに感情移入しましたか?
メインキャラクターのベンですか?長男のボゥですか?それとも一番下のザジャですか?

実際私は、途中でてきたベンの妹のハーパーの旦那さんジャックに感情移入していました。

大きなメインのテーマは家族ですが、それ以外にも、とても皮肉的にブラックコメディチックに描かれた資本主義がとても印象的で、ジャックの家庭はその象徴として登場しました。

もちろん我々は資本主義社会で暮らしているので、我々の普段はジャックの家庭です。一方ベンの家庭は我々現実とは大きくかけ離れた生活。しかしメインキャラクターはベンの家庭です。

そこで、疑問がでてきますよね。
「あなたは、メインキャラクターでもないジャックに感情移入しているけど、それってこの映画が面白かったてことなの?この映画がいい映画ってことなの?」
答えは、人それぞれだと思いますが、私の定義では、この映画は素晴らしい映画です!

メインキャラクターではないジャックに感情移入しましたが、だからと言ってメインキャラクターを信じられなかったわけではないです。
動物というのは他者の気持ちを感じ取ることができる生物です。さらに人間は他者の気持ちを感じ取る人の気持ちを感じ取ることができる動物です。
つまり、わたしはジャックに感情移入することで、ベンのキャラクターを感じ取っていたのです。そこまでは人間のストーリーテリングの領域が行き届く最大の範囲です。

とても色の濃いメインキャラクターを自分に近い存在であるジャックの家庭から見ることで、この映画を楽しんでいました。だから、こんなにちょっと異質でカルトチックと言われてもおかしくない映画であっても、テーマである家族を感じることができたし、素晴らしい映画だと感じることができました。

どうしても映画評論をするとなると、その映画が何を伝えようとしているのかを文章化しようとしてしまいますが、それはナンセンス。なぜなら、映画は映画館で2時間でストーリーを通してテーマを伝えるのが美しいのだから、それを文章化するとその美しさをぶち壊してしまうことになりますよね。

つまりは、映画評論を読んでも、その映画を見たことにはならないのです。映画は2時間楽しんでなんぼ。2時間の中で何が見えるのか、どのような感情になるのか、何が頭にのこるのか、何を伝えたくなるのか。これが映画の映画たる所以だと思いますね。

ストーリーテリングの最大の幅を使ってでも楽しむことができる映画は、なくてはならないもの。
ストーリーテリングの一角をなすと入っても過言ではないでしょう。

この映画もそう。2時間という枠組みでエンドロールで感じる感想が変わってくる。
わたしも最初は、なんとリズミカルで自分の波長に合う映画だろう!と思っていましたが、最後の最後のスローダウンで、すこしガクッときてしまった気分でした。
でも、何にせよ素晴らしい映画です!ぜひお手に取ってみては?
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